何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

利便性の客観的評価という価値観は実は地雷要素でしかない

 

菊池雅志 on Twitter: "日本「Suicaまたはクレカを取り出す」「ピッ」(クレカでサインやパスワードが不要なことも多い)→おしまい。 中国「スマホを取り出す」「画面ロックを解除」「アプリ起動」「QRコード読み取り」「金額を打ち込む」「客の通信費で決済」… https://t.co/xUDrtDXJQE"

ご本人客の利便性について語っているだけだといっているのだが、客の利便性とは基本的に客観的な手間は関係なく体験としての満足度に依存するものなので、おそらくQR決済を使っている人も現金派も利便性は変わらない  

 

この話しの流れの中で・・・

 というコメントを見ました。

恐らくは件の発言についていろいろと意見がきており、それについての反論だと思うのですが、利便性について、それもお客様側からの利便性という観点での反論はあまりよろしくありません。

 

というのも、マーケティングであったり、企画に関わる人であれば今更説明するまでもありませんが、利便性というのは極論受け手により評価軸が変わります。

 

「特定個人ではなく、広く」等という表現を付け加えれば問題無いように思われがちですが、そもそも操作性であったり利便性というのは、年齢、性別、時代など非常に属性に依存して評価が変わってしまう物で、それは止むを得ないのが実情です。

 

例えば、スマホのスクリーンサイズは値段が同じなら画面サイズが大きい方がお得ではないか?と思う人がいる一方で、逆に大きすぎる画面は本体サイズにも影響し、結果的に操作し辛かったり、重たくなるなどの話しもあり、一定のサイズ以上になると敬遠される傾向もあります。

近年のよくある議論では、電子マネーが良いのか、現金がよいのか、それともクレジットカードが良いのか、という議論も同じで、否定する理由、肯定する理由はどれであってもいくらでもつける事はできますが、結局それぞれの理由がどの程度影響するかというのは、その人の属性によります。

 

結局、利便性の高さという判断をお客様側からすると、その人がストレスを感じないものが一番利便性が高いというのはいうまでもありません。

極論言えば、QR決済よりも現金の方が楽で利便性が高いと評価する人がいても当たり前の事で、同様に電子マネー決済よりも現金決済の方が楽で利便性が高いという人がいても当然当たり前の事です。

ある人にとっては、事前にチャージとか面倒だよね、という人もいるでしょうし、逆に、いやいや今時チャージしなくても使えるから、という意見を述べる人もいるでしょう、さらには、いやいやいや、チャージせずにどんどんお金が使われるとか怖いわ、という人もいるでしょうし、それぞれの人が様々な視点でその操作性や単純さについて意見を持ちます。

利便性とは読んで字の如く「便利である事」を指し示す言葉ですから、そういった事を総合的に評価したものが利便性という事になります。その為、ある行為が煩わしいとか、一手間かかるよね、という事のみで利便性が低い、という評価にはなりません。

便利というのは、実はマイナス要素があっても成立してしまう評価ですから、早いであったり、軽いのような、ある共通した尺度をもった絶対的な評価ではないという点に注意が必要です。

 

こういった事もあり、マーケティングであったり企画段階では「利便性が高い」という言葉や表現を使う場合必ず「誰にとって」という前提が明示的に宣言されることが一般的です。

 

言い換えれば、そういった前提が明示的になっていない状況で「利便性が高い」と使うマーケティング担当者や企画担当者は地雷である可能性が高いです。

 

まぁ、雑談の中でとっさに出てしまう事はありますが、それは言い換えれば「(私にとっては)(AよりもBの方が)利便性が高い」という表現を省略しているわけですから、あくまでも自分の感想を述べるに過ぎませんので、相手に向かってある評価をする場合に使うのは少しズレているかな、と思います。

 

元の話しが日本の中国の決済のあり方を前提にしたディスりでなければ、ただ自分にとっての利便性の話しでなんらおかしな事は無いと思いますが、元の話しがQR決済を使う中国よりも日本の電子マネー決済の方が、という一般的な事象について、国毎の違いを比較しているわけですから、これは流石に私個人の利便性、という表現だったというのは苦しいかもしれません。

 

まぁ、私であれば、中国では日本で使われる電子マネー決済よりも一手間掛かるにもかかわらずQR決済の方が普及しているのは不思議だよね、程度の話しにするでしょうか。

 

ただ、実はこれ、両者には大きな違いがありますので、QRの方が普及しているのは実は合理的理由もあります。

単純に言えば、スマホの成り立ちであったり、各国の決済事情も関わっているので、将来的に何が生き残るかという点はまだ実は決定されていないレベルのものです。

 

電子マネーで言えば、致命的なセキュリティ上の欠陥の解消について現在検討が進んでいますが、これが解消できるかどうかは大きな影響を及ぼすものであるのは事実で、この問題は電子マネー界隈だけでなく、スマートキー等も同様の問題を抱えています。

実はこの点が結構大きな問題で、上手い解消方法がないと、簡単であるという最大の利点を失う可能性が非常に高いのが現状です。

 

まぁ、何れにせよ「利便性」という事を語る場合は、誰にとって、という表現を含めるとともに、広い議論の中で「利便性」という評価軸を使うのは非常に危険であるというお話でした。