何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

寧ろあのインシデントはベッテルの才能があったからの事

昨晩のF1カナダGPは物議を醸す結果となり、ベッテルは当然の事としてハミルトンにも不本意な後味となったことでしょう。

 

さて、個人的な意見として述べるなら、あのインシデントは仮にベッテルではないドライバーでれば寧ろ大変な事故に発展していた可能性が高く、寧ろ安全措置としてもベッテルは最善の操作を行ったと考えています。

 

オンボード映像含め沢山の映像、写真が出回っているので参考資料集めには事欠きませんが、私が最初に感じた事は「よくこれ2台が絡む大事故にならなかったな・・・」という事です。

 

インシデントとしてみれば、ベッテルがコースオフして、その後のコースへ復帰する時にハミルトンの進行を妨げた、その程度の議論になってしまいますが、実際はもっと危ない状況で、そんな単純な話しではなかったと思います。

 

言うまでも無く、F1の速度で車を安全に停止させるというのは相当難しく、さらに芝生やグラベル上ではコントロールする事すらままなりません。

もしあの芝生の上でベッテルが全力でブレーキングを行っていれば、おそらくマシンは挙動を乱し、ハミルトンがインシデント発生時と同様の走行をしたならば確実に接触しレッドフラッグの対象となるインシデントが発生していたでしょう。

 

あの時ベッテルが行っていたのは、まず第1にマシンのコントロールを失わない事。

カナダGPのコースは所謂公道コースである為、ランオフエリアも狭く、且つそもそものコース幅が非常に狭いことが特徴です。

その為、映像を見てもわかるように、ベッテルがランオフエリアからコースインした際、クラッシュを誘発せずに安全に走行するには、逆側のコースラインに到達する前にコントロールを回復し、且つ、後方車両との接触を起こさないという事が必要となります。

 

仮にベッテルがコントロールを失い、コースイン後も逆側のコースラインを超え壁に激突していれば確実にハミルトンと共に多重クラッシュとなってしまっていたでしょう。

 

その為、兎に角ベッテルがやるべき事は、何が何でもコントロールを失わないという事だけで、それはF1規則でも定めている安全規則にも準拠した行動であると考えます。

 

 

おそらく、あれがベッテルでないドライバーであった場合、本当に同様の操作ができたか?と問われれば私はトップクラスのドライバーでも難しいと考えますし、仮にそれができずに多重クラッシュとなってしまっても、回避できないよなぁ・・・としか思わないでしょう。

それ以前の原因となったミスは責められるとしても。

寧ろ、中途半端なドライバーであれば、反対側の壁が怖くなり無理なブレーキングを行った結果、コントロールを失いそれが原因で多重クラッシュに至る事の方が可能性としては高く、あの結果は明らかに「彼だからただのインシデントでおわる事ができた」としかいえないものです。

 

ですので、ベッテルが無線などで再三訴えていた「あの状況ではあれ以外の操作は選択する事はできなかった」というのはその通りだと思います。

 

その他、気になる点としてはFIAの裁定理由と裁定結果です。

FIAが公開しているドキュメントでは「危険な方法で強引にトラックへ戻った結果、カーナンバー44をコース外へ押し出した為、カーナンバー44はそれを回避する事を強いられた」とあります。

 

まず、映像などを見る限りベッテルは強引に戻ったというよりも「最も安全な方法を選択した結果」マシンをコントロール下に置くためにあのような走行となった、と考えるのが妥当でしょう。

 

私の見落としがなければベッテルオンボード映像ではアクセルを踏んでいるランプ(変速指示のランプ)は確認できておらず、少なくとも無理矢理突っ切る為に強引な走行を目指した行為はなかったと考えます。

 

また、コース復帰後のハンドル操作を見ても、かなり左右にハンドルが振られており、いわゆる芝生のようなグリップの低い路面からグリップの高いコース上への復帰により後輪のパワーが暴れた部分を強引なブレーキングを使わずになんとか壁への接触を避ける為にコントロールした結果の操作であると見受けられます。

分かり難いのですが、F1マシンのタイヤは主にタイヤ自体の粘着性とダウンフォースを利用してあれだけのパワーを後輪駆動という仕組みで安定的に稼働させています。

その為、速度の安定性を欠いた状態であったり、ダウンフォースが抜けている状態であると後輪に偏ったとてつもないパワーを正しく前方に向けるだけでも非常に難しく、少しでもブレればそこに一気に大きな力が働き、ハンドルが暴れ出してしまいます。

最近でいえば中国GPでアルボンがクラッシュした映像がわかりやすいと思いますが、たったコースオフ後、ランオフエリアの芝生の中にあった数十センチ幅のアスファルトの路面を走行した瞬間にグリップの違いからマシンが暴れ、あれだけの事故を起こしてしまうわけです。

 

それと同じ状況がコース復帰時、厳密にはコースオフからコースへ復帰し、姿勢が正しく戻るまでの間ずっとマシンをコントロール下に置くために必死に操作した事が、映像からもマシンの挙動からも判ります。

 

その結果については見てわかるように、車両自体の接触はなく、結果として後続車であるハミルトンの進行を妨げたという事実のみ残りました。

 

結局の所、裁定すべきはこの部分のみであるべきで、ベッテルは意図的にハミルトンの進行を妨げたのか?という事がペナルティの審議になるのが妥当でしょう。

 

 

あくまでも個人的見解ですが、私が見る限りはあれはレーシングインシデントであり、寧ろベッテルは多重クラッシュを発生させなかったわけであって、それ以外の何物でも無い結果であったと思います。

但し、自身がコースオフしたという事実はかわりませんし、その点については当然ドライバーとしての責任を負うべきところでしょう。

 

当然、ハミルトンが悪いわけでもありませんし、なぜ彼にブーイングを浴びせるのか?という話しはあります。

そもそもコースオフしたはベッテルなので、それが原因である以上、FIAの裁定がどうであれ、原因は彼にあるのであって、ハミルトンにはないですからね。

 

ただ、そういった後味の悪いものにした原因は明らかにFIAにあると思いますので、FIAはあのブーイングは自分達の行動の結果、本来批難されるべきではないハミルトンというトップドライバーに対してファンのヘイトを集めたという点を十分理解してほしいものです。