何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

おそらくそれは火葬を病院で行っても何も改善しない

 

赤木智弘氏「病院で火葬しないのは葬儀社の利権」&「ある程度の規模の病院には炉の設置を義務付けろ」 - Togetter

病院側ではなく家族(遺族)側の問題の方が大きい。通常は遺族がいる場合、まずは何処で葬儀をするか考え、その段階から葬儀社が支援にはいる。葬儀をするのかしないのか、やるならどの程度なのか、その後の手配もね

 

独創的なアイデアと、無知による身勝手な発想は紙一重だと思うが、これはなかなかのものです。

 

そもそも、火葬場は新設自体が難しいだけでなく、葬儀全般含め経営状況としてはそれほど安易に儲かるものでもありません。

近年だけで数件は葬儀・火葬権利の詐欺はありましたし、なぜそんな詐欺が横行したかというと、単純に葬儀場や火葬場が混み合い、死亡から埋葬、埋葬後の手続きまでを安心して送りたい、もっと言えば、自分の死後遺族に面倒はかけたくないという個人の心理を利用された結果、葬儀社の会員権詐欺のようなものが横行しました。

 

確かに、点の部分だけを見れば葬儀自体は利益が出しやすいものです。

花代や香典関連の書費用、各種手配するモノやコトに付帯するサービス料など含めてもそもそも赤字にならないようにする事自体は問題ありません。

 

が、問題はそこではありません。

 

そもそも火葬場云々と指摘していますが、火葬場は稼働率が異様に高く、地方では火葬場待ちと言うことも珍しくありません。

特に近年のように異常気象が続くと、より局所的に死亡数が増える等もあり、且つ、日本固有の事情により火葬場を利用する日が重なる(六曜を参考にするケースやその他関係者の仕事の影響による調整するものなど)ことも多く、結果的に火葬場はあるとき恐ろしく混み合うというジレンマが生まれます。

 

赤木氏の仰っている事は、結局のところ「社会の問題を解決するためには個人は犠牲になるべき」と言っているだけの話しで、その改善には少なくともマイナス以上のメリットはありません。

 

病院から即火葬というのは、都心部のみではまだ議論の余地がのこるでしょうが、ほぼ地方では適用不可能でしょう。

さらに火葬はただ焼くだけではなく、宗教であったり、その人故人やその家族の事情により様々な対応を行います。

当然火葬中も遺族は火葬待ちをしますので、少なくとも数人、多ければ数十人という人間を収容できる場所も必要です。地域によってはこの時に宴会を開いたりする風習(故人を明るく見送る)もあり、ただ火葬スペースだけでは事足りません。

 

さらに病院から直接火葬をするのであれば、通夜の対応や葬儀の対応も必要です。

通夜の場合、これもまた地方により事情は異なる上、宗教によっても対応が異なります。明るく見送るものもあれば、朝までひたすら見届けるものもありますし、地域によっては結婚式などでもあるように、故人と知り合いでなくても訪れるという風習もあります。

 

そういった事を全て病院が対応するのであれば、おそらく今の葬儀社、火葬場の運営よりもよりコストが上がることは容易に想像ができます。

 

赤木氏はそれらについて「やらなければいい」という意見をのべていますが、それは「アイデア」ではなく、ただの権利の剥奪です。

 

個人の権利を剥奪すれば解決すると仰っているわけですが、それで解決されるのはそれ以上のものなのかといえばさっぱりです。

 

そもそも火葬場数を増やす云々ではないので、火葬の数自体はコントロールできません。少なくとも今でさえ火葬場待ちという事がある以上、もしも速やかに火葬するならそれらすら全て改善できるアイデアが最低限なければ議論の土台にすらのりません。

なお、今ぎりぎりなんとか現状を維持できているのは、実は通夜や葬儀の設定が宗教によるのかどうかはありますが、特段この日に設定しなければならないというものがなく、火葬場の予約や葬儀場の予約を調整しつつ、それに対して通夜を設定するという事ができるので、火葬場の予約が取れなくても最悪は火葬のみは近親者で、という対応で回避しています。

 

ですから、仮に病院が即火葬を行うというなら、最短で24時間程度の安置後即火葬なわけですが、まぁ、それを常に回せるだけの環境を作れる病院なんてほぼないでしょうね。

 

なお、葬儀者と火葬場は一般的には別ものです。

たまたま大手が一緒に運営しているところもありますが、多くの葬儀社は火葬場を持ちません。

 

多くの場合火葬場とは自治体が運営するものが多く、公的資金も含めて運営しています。これは葬儀社とは関係ありません。

一方で、葬儀社はJA等の大手から独立系まで含め大小様々なものあがり、最近では安価なサービスまで参入するなど寧ろ低コスト化が進んでおり、病院が参入できるほどの市場ではありません。

 

赤木氏の話しは葬儀と火葬の話しがごっちゃになっている時点で、恐らくはその界隈の事情についてしらないのだろうな、と思うわけですが、アイデアとしてまとめるとしてももう少し市場や状況を確認すべきだろうな、とは思いますね。

 

なお、火葬場を調べる方法は幾つかあるが、例えば厚生労働省のデータベースを活用する方法もある。

 

参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei24/

 

見てみればわかるが、地方では半数以上が市営、村営のものが大半であり、東京のような大都市圏であればなんとか民間の方が多い状況が火葬場の現実。全体でみれば確かに民間事業者も多いわけですが、だからといって民間を全員利用しているわけではありません。地方の場合はだいたい市営・村営が最初の選択肢で、それが一杯の場合はその他の選択となるわけで。

そして火葬自体の料金は暴利をむさぼるほどのものでもなく、安いモノでは数万円(1万円や3万円等)からあり、高くとも概ね10万円を超えない程度の料金に過ぎない。

さらに、組合制度や会員制度による割引や、住民が地域内であれば割り引く等の制度もあり実質的に葬儀全体に占めるコストでいえばそれほど高くもなく、時給換算でも数千円程度であり、それで火葬+火葬の間の休憩施設の利用+火葬後の納骨までのサポートがくるというのはコストとしては圧倒的に安いと考えるべきでしょう。

 

おおよそここを利益云々で議論する意味はなく、寧ろ病院に設置と運営を義務付けるのであれば新しい税金の投入などで支援しなければ、おそらくは成立しないほどだろう。

 

まぁ、私が理解している葬儀・火葬関連の事情としてはそんな感じです。