何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

実際はその前時点で形勢は動いていた

 

31銀の何がすごいのか頑張って説明してみる話

何を説明しているのかちょっとわからなかったのだけど将棋の概要としてとしては概ねあってる。ただ、この説明から3一銀について戦略的な意味は伝わらないのではないかと思うしあれはその前の桂得からの流れだからね

 

棋聖戦第2局。 - 渡辺明ブログ

正しい評価かと。個人的には1手違うだけで8七歩はなかったかもしれなくてそれが勝敗を分けた一つの要因かな。例えば9六歩が突かれているだけでもその後の流れ的にあの時点で歩を打たれる事はなかったかもしれない。

  

藤井聡太七段(17歳)最強将棋ソフトが6億手以上読んでようやく最善と判断する異次元の手を23分で指す(松本博文) - 個人 - Yahoo!ニュース

正しく評価するならば、別にアレが別な手であってもあの直前の4筋の攻防で飛車が回った後の角の道を防げた時点であの将棋の大局は決していたかと。ただ、その中で一番効率が良かったのが3一銀だったというのが真実。

 

自分理解として、そもそもあの勝負ではコメントにも書いたようにその前時点の4筋の攻防への布石である程度の仕込みは終わっていたと思う。

 

渡辺棋聖の得意戦型でもある櫓からの攻めに対して数的に負けない配置をとり、4筋の攻防で結果として桂得でやり取りを終えています。

 

この時点で本来は先手が手番を持っているので次の攻めに行かないといけない(そもそもあのまま4筋の攻防に入る時点で桂損は確定していた)わけだけど、その後の手としては良い攻め手がなかったわけです。

唯一攻防を兼ねての角道についても話題となっている3一銀によって完璧に封じられてしまっていたのですが、その前に桂得しているので、先手の薄い守り側からの攻めの可能性がその時点で出ていました。

具体的には 8七歩を垂らされる際、あの後の流れは仮に同金ならば9六歩を突くしかなったわけで、その為に渡辺棋聖は先に9六歩を同金の前に突いたわけです。

この手順は本来先に9六歩が突かれていれば発生しないのですが、実践では渡辺棋聖が先手であり、得意戦型からの攻めを先に繰り出していた場面で本来はその部分の受けを考える必要がなかった(仮に考えるとしてもその時には相手陣に拠点ができており速度的に負けない/角が成り入る等)はずだったわけですが、3一銀によりその状況は一変したわけです。

 

これだけであれば渡辺棋聖の仰るように形勢としてはそれほど劣勢ではなかったわけですが、事前の4筋の攻防で桂損した事から相手は桂馬を絡めた攻めが有効となっている状況でした。そこに本来比較的守りの手として突き上げる9六歩がつかれていない事から、8七歩、同金、9五桂の流れがでてきます。

 

この流れは完全に攻防が入れ替わる手順で、実際には1四角のような攻めも想定される中で言えば完全に読み漏れ(漏れというと失礼な気もしますが、おそらくその手筋がそれほど怖いものになるとは考えていなかった為、限りある時間の中での優先順位が低かった)だったのではないかと思います。

実践では9六歩を想定して、そもそも7五桂と打った事からわかるように完全にその局面を読み切った上での手順であったことがわかります。

 

つまりあの3一銀はからの流れは、その前の桂得をした時点で藤井七段の構想はおそらく固まっており、その構想がある為、あの時点で完全な受けを行う事が優先されたわけです。

 

もしあの時点で桂得していなかったり、又は9六歩が突かれており守りの形が違ったとするとあの時点で攻め駒を減らす選択は出来ず、3一銀という選択肢はなかったと思われます。

 

残り時間を見てもその事がよくわかります。

8七歩を垂らした時点で残り時間は24分。

そこから間に渡辺棋聖の手番を挟みますが、次の手は約6分、その次はほぼノータイムで指し、次の7五桂打は約3分程で指すこととなります。

このスピードから桂得した時点からこの構想が確定しており、後は寄せる流れの中で駒得すれば寄せきれるという事がわかります。

 

いや、当然3一銀は凄いのですが、その候補手をひねり出し選択するにあたり、桂得した時点/9六歩が突かれていない事を含めそこから終盤までの流れを完全に構築し上げたという事そのものが凄い事で、その構想というかその読みの深さが、結果的に守備的な一手と思わせたあの3一銀を『攻め駒として使う事を恐れる必要がない』という着想にまで到達させたのだと思います。

というか、読み切れていないと迂闊に守りに手駒の金銀を投入するという事は難しく、ぱっと見素人目には形勢は五分に見えていましたから、普通であれば手駒をあえて投入するという選択肢はなかったと思います。それを投入する事が問題ないという事を読んだという事、読む為に必要な情報を漏らさず把握し、活用できたこと、これは本当に恐ろしい事です。

 

勝負感というとあっさりしているのですが、駒得した、確かに攻め駒として優秀な桂馬を手にしたという事は大きいとしてもそこからあの流れを導き出し、きっちり攻めきるという読みの深さは本当に恐ろしく『もう勝負感というか何か守護霊がつぶやいてない?』ぐらいのレベルに思えます。

 

というわけで、想像を超える1手が出た!というよりも、その前の櫓から起きる事が想定された4筋の攻防を確実に制し、駒得という状況を作った上で、そのままその駒得を生かした戦略をくみ上げ、相手が渡辺棋聖(三冠)という誰から見ても明らかに現役最強クラスの棋士を相手にミスをする事なく寄り切る。

 

本当にこれは地力がきっちりついている事の表れだと思います。

 

それが素人である私が見ても「これは凄い・・・」と思えるわけですから、おそらく棋士の先生方からすると私のような素人以上に「ひえー/ひょえー」とつい言ってしまう程の驚きだと思います。