何気ない記録

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マックの時給1500円の話と最低賃金の話はそもそも別なお話

 

マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。 (中嶋よしふみ SCOL編集長) (シェアーズカフェ・オンライン) - Yahoo!ニュース

マックの時給問題と最低賃金問題は本来は別なんだけどね。マックは根本的に赤字で戦略的に客単価を切り下げすぎたのが根柢の問題。上げる原資もないので潰れるかどうかの話。最低賃金は構造の問題。両者は別物ですね

2015/04/17 02:11

 よんだ。

 

言い方や説明の仕方はあれとして、実は、個々の説明だけを切り出して、適切な問題にぶつけてあげるとそれぞれは実はそんなにおかしくはない。

ただ、この記事では最低賃金問題とマックのようなビジネス戦略上失敗した現状が持つ課題を一緒にかたるとおかしなことになる。

 

まず、最低賃金を上げるべきというのは、いくらにするかという話は別として行うべきで、これは政治家も理解し政府もその方向で動いている。

実際問題、国内景気を安定させるという目的でも企業側もある程度、段階的な賃金の上昇は行うべきと考えているし、それが結果、企業業績にも寄与する事は理解しているので、別にだれの利益にも反しない。

そもそも国内での販売・消費を行う企業は、どうあがいても国内景気に左右されるわけで、特に日本企業の多くは内需依存型なわけで、その事からもこの部分に大きく否定する経営者は非常に少ない。

 

もっとも限度はあるが。

 

なお、「構造の問題」とコメントに書いたが、私は以前から指摘しているように、そもそも派遣労働者やアルバイトというのは実はリスクを抱える代わりに流動性を許容されている雇用形態なので、そのリスクを追っている部分を本来は対価に反映すべきなのだが、日本型雇用ではリスクの負担にかかわらず賃金構造が決まっている為、結果、リスクを負わされた上に賃金が低いという構造的欠陥がある。

もっとも、それは日本に限らないが、海外の場合、そもそも正社員雇用事態に流動性が担保されている為、その中に納まらないというのは自らの選択か、または別な事情もある程度及んでいるので、日本のそれとはまったく事情が異なる。

 (例えば人種や国籍による差別や不法就労であったり、そういったもの)

 

一方で、マックの問題は別物。

マックの抱える問題は、そもそも二つ。

 

1つは顧客層が悪化している現状。

時間に限らずマックの客層の大半は、学生、子供連れ、打ち合わせや待ち合わせ、時間つぶしに利用するような社会人のように、そもそも飲食をメインとしていない層が多く、且つ、回転率が悪化する客層しか集める事が出来ていない。

一般的に、ファストフードにかかわらず、飲食店では回転率を上げる代わりに単価を安く抑えるか、回転率を上げずに維持できる付加価値を付けた単価設定で商品を提供するかの2択しかない。

しかし、現状マックが抱える客層は、そもそも飲食は行っても500円や800円という単価で1時間や2時間程度は普通に席を占有するうえ、且つ、例えば、4人席であっても2人で利用するなど、座席の利用効率も圧倒的にわるい。

そして、単価を現状のまま上げてもそれらの層は安価な商品しか買わない事がほぼ確定している為、多少の変化ではもはや構造を変化させることはできない。

やるとするならば、海外にあるようなカフェ形式の専門店に一部から変更し、回転率と利益率を追求できる店舗に変えてしまうしかない。

 

2つめは、この話は元記事でも触れているが、そもそもマックの経営が傾いたのは食の安全に関する問題が発生したからではない。

以前からその問題とぶつかっており、前社長時代にも方針転換を行っている。当時の改善は短期的な効果が多少でたものの、抜本的な構造変化には至っておらず、その影響が現状出ているにすぎず、実は、現社長の責任なんてものはこの状況にまで陥る過程ではほとんど影響はない。

にも関わらず、国内やその手の経済誌ではさも安全性の影響から経営が傾いたようなそぶりで世論を煽り、結果、マック側も本来経営上の本質的な課題と向き合うべきときに、本質的な部分を後回しにしてでも安全性の方に手をかける事となった。

 

この指摘、一件すると「お前は食の安全性を軽んじるのか?」という指摘を受けそうだが、そうではない。

例えば、極端な事を言えば、食の安全性をもっともわかりやすく変化させるなら「原材料を全て国産に変更しました」と言ってしまう事は非常にインパクトがあるだろう。

 

実際、ライバルではそれを前面に打ち出した戦略を一時期とっていたわけで。

 

しかし、そのためには顧客層の改革に向け抜本的な戦略変更が迫られる。

それもマックは日本単体の企業ではない為、そのような事を行うとするならば、相当綿密な戦略を立て、その必要性をグローバル本社に説明し、独自戦略を認めるだけの実行的なものを打ち立てなければならない。

 

その時間が彼らにあったかといえば、ないだろう。

 

この2つの問題をマックは抱えており、非常に困難な状況に陥っている。

このような状況でマックだけを見れば賃金の向上が行われることはないし、仮に、最低賃金が上がった場合は、記事の指摘通り人員カットを行い採算をとるしかなく、それでもだめなら、さらに店舗閉鎖を加速させるしかない。

 

そもそも海外ブランドのファストフードチェーンの多くは、実は、日本参入と撤退を繰り返しており、そのような事が起きても別になんらおかしなことではない。

 

それぐらい日本の市場は特異なものなのだから。

 

このように、そもそもマックを取り巻く問題と、飲食業界にかかわらず最低賃金を上げるべきという議論はそもそもが別な話で、マックの状況を見て賃金向上は無理筋という話でもないし、一方で、ほかの飲食が実現できているからマックもそれができるはずだというのもおかしな話でしかない。

 

経営がそんな単純なものであれば、潰れる企業など存在しないし、全員が経営者になっているわけで。

 

この記事はわかりやすくするつもりで、異なる問題を抱える話を中途半端に一つの記事で説明してしまったがために、結果、受け手にその状況理解ができないと正しく理解できないような記事になってしまっている。

 

ちょっと残念な例。

 

但し、読み手側ももう少し市況の状況、特に直近の四半期速報あたりで国内事情を理解したうえで読めればある程度のずれを補正できるので、伝えたい意図を読み取れるとおもうのだが。

 

どうしても日本では経済やお金についての教育が行われない為、こういった問題についての理解も浅くなるし、視野も狭くなる。

結果、前述したように、本来改善が行われれば我々の生活に寄与するはずなのだが、メディアに踊らされた我々が企業側の足を引っ張る結果となり、それが賃金問題や雇用環境の改善により遅れを生じさせるような実情があるのは否めない。

 

物事の本質がどこにあり、本来我々はどれを問題視し、何に意見どのような意見を述べるべきなのか。

そしてそれは、どのような効果を期待し、そのために企業が行うべきことはなんであるのか。

そういった事を考え、伝え、受け手は理解するという環境が図れない限り、おそらく賃金向上のような問題はなかなか進展しない。

 

そういった事を理解して、企業と労働者、企業と消費者がどう向き合うべきかをもっと考えてほしいと思う。