何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

状況を拗らせるのは依頼者の利益に沿わないように思うが

 

「強い女メーカー」の商用利用に関する当事務所の見解 | U&T vessel 法律事務所

うーん、これは依頼する先を間違ったんじゃないかなぁ。商用利用については明示的な事例を挙げていない場合は、個別具体的に判断というのが過去の判例でも明確だし、強い口調という表現は口頭である必要もないからね

 

これなぁ。

 

コメント以上の感想は出てこないのですが、公開されている警告文章は、少なくとも初回に送付するような内容ではないと思います。

というのも、当然相手方が争うケースもありますから、そういった場合に裁判で有利に進めるという意味でも、警告時はまずは金銭的負担を生じない条件、つまり即時利用の停止と今後の利用規約の順守の制約を依頼すればよく、まずはその点の確認が行われているのか、という点が疑問です。

その点の確認が行われた、つまり、実はあれより前に適切な手順での警告が行われたものの、相手方が誠意を見せなかったという事であれば、あの文章となるかと思いますが、一般的には相手の誤認のケース(例えば書面が届いていないケースなど)もあり得ますので、念のため警告文でも、すでに送付済みの文面の概略と送達日時を明示し、それを守らなかったため、という一文を含めた警告として金銭的な負担を求める点、そして次の段階は法的手続きに粛々と入りますよ、という段取りを含むことが一般的です。

 

実際面倒なのですが、ここまでやっておかないと、裁判になると、地味に和解の提案を受けることは多く、そういった際にもどの程度の段取りが踏まれているのか、という点は確認され、それも含め、悪質さであったり、なんだりと判断して、請求額に対してどの程度認めるのかという事が決まっていきますからね。

 

ただ、公開された文面を見ると、どうも初回通知では?という雰囲気を感じますので、それだとちょっと手続きが乱暴で、あまりこういった紛争の対応に慣れていないのでは?という感じを私は受けました。

 

まぁ、実際は本当はどんな手続きが行われたか、という点によってまったく変わってきますから、事実はわかりませんが、だからこそ、そういった情報が間違って認識されることで依頼人が攻撃されたり、その後に不利益を生じさせないように対応するのも、やはり経験であったり、テクニックであったりと、なかなか昨今は法律に詳しいというだけでは難しいものがあります。

 

そのほかで言えば、脅したかどうかという点については、実際に争われる場合は、受け手が萎縮するような行為があったかという点で検討されますので、特段口調であったり、文章であったりがどのような言葉でつづられているかというのはあまり意味がありません。

極論言えば、非常に丁寧で、優しい言葉でつづられていた手紙であっても、受け手が追い込まれるような事を一方的に送りつけているような場合は、誠実に協議することで争いを解決する意思はなかったと認定されかねません。

特に、相手が個人になると裁判所も単純に法律を適用して一律にかつ一方的に処罰すべき、という短絡的な判断にはなりません。

皆さんの中ではどのように裁判所や裁判官が映っているかわかりませんが、実務の面では結構書記官含め、法律は前提としながらも、個別の事案について向き合ったうえでの判断がなされますので。ただ、裁判官も人間だな、と思うようなケースも多々あり、今日は機嫌わるいな…みたいな事もあるのはつらいですが。

 

いずれにせよ、当然民事訴訟については原則は判例を考慮した判決となるものですが、実際にはそれぞれの事情について個別具体的に判断され、少なくない件数で和解の提案が裁判所からだされますので、そういった意味もでもそこに至る手続きであったり、実際の被害であったり、細かい点でいえば当然依頼人の心情であったりと、様々なことを検討して求められている事について考えて対応した方がよいと思います。

 

同様に、商用利用の定義も、あらかじめ明示的に記述が個別具体的に記載されているケースは別ですが、その定義が存在しない場合はそれが記述されている商用利用に該当するのかという点は都度検討されます。

ネットで有名なケースでいえば、いわゆるオークションであったり、ブログのアフィリエイトは事業とみなすのか、という判断があったりするわけですが、あれらも事情を個別に確認し判断されています。

私の知りうる限りでは、まず間違いなくアウトなのは、確定申告時に事業所得とし申告できるレベルの収益を上げているケースは確実にアウトです。

これは、そもそも主たる収益がなんであるかで雑所得とするか、営業所得とするかが判断されるのですが、いわゆる兼業に当たる方のなかで、営業所得とすることができるのは、得ている収益のうち生計を支える主たる収入とみなされる場合のみ営業所得とされ、それ以外は雑所得にすぎず、実際これで税務申告などするとあとえ修正を求められます。

 

まぁ、判断対象は異なるのでそれぞれの事例、事情によりますが、単純に広告を掲載していたのでそれは商業利用であるとは判断されるわけではなく、当然状況(なお、あまり金額は関係ありません)を確認したうえで、どのような意図であったか等も考慮し裁判所が判断することになります。

 

また、商業利用とする判断根拠も必要となります。

仮に、あらかじめアフィリエイトでの利用は禁止、としている場合でも、それが素材として使われたのか、例えば記事の引用として使われているのか、また出典や権利者について触れているのか、そもそもその利用物が営利目的に利用されているのかというのは様々な事情で判断されます。

 

なので、判断としては、あらかじめ個別具体的に利用者が判断できるような記述として利用を適切に限定していたのかという点があいまいさを排除するうえでは必要ですので、「商用利用は禁止していた」というだけで、一方的に不適切利用であると利用者が認識できたかと問えば、それは難しいと考えますので、その点は争点となるのではないかと思います。

そういった点もあるので、前述のとおり、一般的にはまずはそれが利用規約に違反している事を通告し、善意をもって対応してほしいと依頼する事で、その行為が違反ではないという判断、つまり事実の誤認を排除するわけです。

この段階で排除されていれば、その後の手続きや議論において「利用規約からは判断できなかった」であったり、「アフィリエイトも商用利用に含まれるとは思わなかった」などという言い逃れはできません。

 

こういった論拠の積み上げも昨今のネットにある程度精通した弁護士事務所に相談すると私以上に詳しく丁寧に対応していただけますので、こういった点については、着手時の相談の際に話を聞いたうえで判断してもよいかと思います。

 

 

とはいえ、実際には冒頭にも触れたように実はそういった丁寧な対応がされていたにもかかわらず、相手方が誠実な対応を行わなかったという事も当然ありえますので、なんとも言えませんが。

 

ただ、過去のこういったケースでもありましたが、依頼された弁護士事務所が依頼者は正しいと発表するというケースはあまり依頼者を助ける事にはならず、どちらかというネットではより反発を強めることになりかねません。

 

正直、損害額が事実として50万円であったとしても、本件で失われる周囲からの信頼や今後の活動への影響も考えると、その点にあまり拘るのではなく、あくまでも利用規約を順守して貰いたかったという点を強調して上手に世論も味方につけつつ対応する方がよいと思います。

 

作られているサービスは良いもので、ファンもたくさんおられると思いますし、そういった方であれば当然今後も様々なサービスを生み出されることと思います。

誤った認識や、誤った情報で依頼人が攻撃されることを弁護士が永遠に本件の契約をもって対応してくれるのであればよいですが、現実的にはどこかで対応については線引きがされることになるわけですから、自己(つまり依頼人である作者)の利益を一番に考えれば、あまりこれだけ注目されていることで事を荒立てるというのはおすすめできません。

 

もっとも、依頼人である作者からすれば、自身が作成したサービスを望まない形で利用されたわけですから、なぜ自分が歩み寄る必要があるのか、と考えるかもしれませんが、昔と違い、今のインターネットの正しさは、法律の正しさだけでは判断されません。

 

そこには、人間の考えという非常にあいまいで、流されやすいものが介在しているという点も考えれば、怒りを上手にコントロールして、むしろこういった事の対応のなかで相手をうまくコントロールし、自身の評価を上げることで失った利益を回収するような働きかけが私はよいのではないかと思います。

 

実際、このような手続きや考え方は法人対個人の争いの際にも行う手法です。

大抵のケースで法人は個人からすべての損害を回収することなどできません。

ですから、企業としてはその後の経済活動において、もっとも利益となる結果をどうすれば生み出すのか、という点で、選択肢の判断をすることが最終的な企業利益としては最大になる、という事が実務の面では優先されることは少なくありません。

 

いろいろな気持ちはあるでしょうが、これ以上被害者である作者自身が追い込まれるような状況にならない事を切に願います。