何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

なぜ状況が逼迫してからの緊急事態宣言に意味はないのか

 

緊急事態宣言「“あさって宣言”はデマ」 安倍首相 | NHKニュース

わかってないんだろうな。状況が逼迫する前に出すモノが緊急事態宣言であって、もはや事態が逼迫してから出すのは敗北宣言なんだが。少なくとも日本医師会ですら緊急事態宣言をもう出すべきでは?といってるわけで。

 

なぜ状況が逼迫(病床数不足、医療崩壊、経路不明の感染者の増加等)してから緊急事態宣言を出す事に意味が無いのか。

 

それは単純に「緊急事態宣言自体にそれほどの意味がないから」です。

 

言葉だけを聞くと「これは何か凄い事が行われて、私たちの生活が一変するぞ」と感じますが、ほぼ全ての事に対しては現在行われている「要請」と何らか変わりません。

 

例えば、東京都への道路が封鎖されるや、出入りについて検問がしかれる等という事はありえないでしょう。

精々おこるとしても公共交通機関の停止や、高速道路の封鎖程度で、それ以外の道路を封鎖するとなると法律上の事由がそれ以外(本件ではなく別なもの)で生じない限りは不可能です。

 

指導や要請のための人員が配置されるのが精々、というか、それしかできないので。

 

つまり日本で行われる「緊急事態宣言」とは、どちらかというと「公的支援人道支援の為の行為を法的に正当化する為」という事が主な目的で、これにより、例えば戦略物資の公平な分配や確保が可能になるであったり、特定の地域の病院を特定疾病対策にあてる事を指示するなどそういった行為が可能になる程度で、あとはほぼ変わらず効果は限定的なのです。

 

ですから、大凡、現在の要請に従わない人は緊急事態宣言が行われても「それ禁止できないよね?」といって自由に振る舞うでしょうし、仮にそれ以外の事由を付けて強引に制限しようとしても「法の拡大解釈だ!」という反発を招くだけで、おそらく実効性のある指示、制限等はだせません。

 

では意味がないかといえば、そうでもありません。

特に公共交通機関の制限や、法人の行動に対しては大いに影響を及ぼせます。

特に政治的結びつきが強い団体に参加する企業(経団連、労組や共済組合、医師会のような各種団体等)に対しては影響を及ぼす事が出来るため、結果として休業の強い要請(つまりは実質止むを得ない事由が無い限り休業を指示する事と同義)を行える等が期待でき、結果として爆発的な感染拡大や、隣県への拡散、海外渡航者/赴任者の帰国制限や隔離措置の要請等様々な点で政府と団体、企業が次のレベルの行動に移せます。

 

結局、日本の緊急事態宣言というのは、他の国で言えば「自治体からの強い要請」程度の効力しかない為、出す事を躊躇する意味はほぼ有りません。

特に、あれだけ要請を繰り返しつつ、具体的な業種や規模にまで言及しているわけで、且つ、それを受けて既に3月上旬から多くのイベントや企業が興業や活動自粛を進めているなかで、これ以上の自粛というのは仮に行われてもその効果は限定的なわけですから、大凡宣言しないというのは政争の影響である以外の何者でもありません。

 

意味について議論される事は大事です。

が、正解であったら万歳、不正解であったら残念ながら多数の死者でてしまいました、等という博打を打つべきではありませんが、そもそもこの状況では、出しても出さなくても結局のところ博打です。

一方で、むしろ「出さない」という博打を打つ(つまり規制なんて意味は無いし、緊急事態宣言の効果なんてわからんだろという意見を正当化)のであれば、いっそうのこと一切の要請をしない方がまだマシです。経済的には影響は(博打に勝っている限りは)最小限に留められる上、国民への精神的な影響も最小化できるでしょうから。

 

また、緊急事態宣言を行う事で経済的損失が大きくなるとの観測がありますが、おそらくは別にしてもしなくても同じでしょう。

というのも、今の状態、つまりは3月から行われている活動や外出の自粛が続くというのが一番問題であって、これが4月、5月と続くようであれば恐らくは緊急事態宣言を出さなくても受ける影響は致命的なレベルです。

むしろ、後になってから出す事の影響の方が圧倒的に悪影響を及ぼす事は明らかですから、出しそびれるという事は、実質「出さない」という選択肢しかなくなるという事です。

 

なお、唯一緊急事態宣言を出さなかった事を正当化できるとすれば、遅くとも4月2週目、つまり今予告されている4月12日以降は要請が不要になった、皆さんよく頑張ってくれました、さぁ皆で花見にいきましょう!という事になれば、それは間違いなく「素晴らしい判断であった」といえますが、現在の状況を考えて、4月12日に状況が楽観視出来るほど沈静化しているとは思えず、仮にある程度コントロール下に置いた状態になっているとしても「引き続き皆様のご協力を要請したい」という謎の要請継続がおこなわれ、恐らくは5月の連休明けまでは自粛要請状態が続くでしょう。

3月上旬から5月連休までですと実質2ヶ月間は最低でも制限が行われているわけで、それですら「このまま数値が落ち着いてくれれば・・・」程度の予測でしかないわけですからね。だったらもっと早い段階で緊急事態宣言を出してしまって、より自発的な行動を求める体制を強化した方が結果として影響は限定的にできたでしょう。

少なくとも地方への拡散や今後最悪のケースとして予想される病床数不足や医療崩壊という状態に対してはリソースのコントロールが可能な状態にできたはず、と考えられるかと。

 

なぜならばそこまで経済が疲弊した状態で、さらに緊急事態宣言を出すと言うことは、出すタイミングを逸した事を認める事になる上、さらにその後にとるべき責任を重くする事ですから。現状の都関係者や少なくとも今の政府にその選択はできないでしょう。

 

さらに言えば、観光関連の影響は日本云々ではなくそもそも渡航元の政府の方針によるもので、日本の緊急事態宣言の影響は関係ありません。というか、既に日本向けの渡航を制限または禁止されている状況ですし、日本も多くの国への渡航制限に加え、全ての国からの入国者に対して隔離措置を要請しているわけで、これ自体の影響は日本国内の自粛要請や緊急事態宣言の影響による話しとは別物です。ハッキリ言えば、別に緊急事態宣言していない今も渡航制限あるわけですが、来る人は来るし、これない人はこれない、ただそういった「周囲の選択の結果」に過ぎず、日本の自発的措置による影響は皆無です。

 

ただ、安倍政権云々や自民党がというよりも、どちらかというと日本の政府に与えられた権限がそもそも何にも無いというのが実情で、そういった国による管理が行えない状態を(結果として)望んだ(/黙認した)のは我々国民であるというのは紛れもない事実です。

 

なお世界的に見ても政府が一定の範囲を超えた事態において、国民の活動を一切制限する事ができないというのは中々珍しい状況で、あれほど人権に厚いヨーロッパですら少なくとも議会承認や大統領権限において一定環境下では強制権が認められている上、その発動/発令に対して当然一定の反発はありますが概ね「止むを得ない」との認識なわけで、日本の「あらゆる状況下で政府に何ら手段がない」という事の異常さはなかなかクレイジーであると言わざるを得ません。

 

私個人は少なくともこういった指定感染病や特定の事象化においては政府による強制的な権限を認める事ができないと、今イタリアやスペイン、そしてこれからアメリカで起きつつある状況のような時に、日本には打つ手がなにもない、まさに地獄のような状況が訪れる事になるわけで絶対的に必要な事であると以前から考えています。

ただ、そういった事への備え(法整備やルール整備等)は、本来平時に行うものなのですが、これまでもあったように日本では「そのような事が必要となる事はありうるのか」という議論が先に行われ「備える為の準備作業」はどの政党が与党となっても行う事ができない仕組みである事は理解が必要です。

 

いわゆる「自民党は法を悪用する」という議論は、同様に「○○党は法を悪用する」を正当化する事になる為、何処かの政党にその論法を使う以上、どの政党が対応しようとしても同じ事です。

なぜならば政党支持というのは、大抵の場合、宗教のようなもので、少なくともそういった議論をする限りは日本で真っ当な緊急事態への備えは行えないわけです。

もっとも議論している人間がアホなので落とし所や適切な運用方法を定められないだけであるという話しなのですが、アホしかいないのが私たちの代表だとすれば、結局アホを選んでいる私たちがアホなのだという事に他ならないわけですから。

 

という事で、私からすると「もう今さら緊急事態宣言を出してもこれだけ経路不明の感染者が出始めた以上、まぁ、収まらないだろうな」程度の感覚ではいますが、それでも東京はさておき、日本全国を見渡すと、まだ影響が軽微な自治体は沢山あるわけですから、どちらかというとそういった影響が及んでいない地域への影響を最小化する事を目的として出すべきなのではないですかね、と感じている次第です。

 

都民の私からすれば、おそらく東京都がどんなに健全な状態であっても、ひとたび地方の活動に影響がでれば流通商品への影響は実は一番東京都を含む大型の都市の方が圧倒的に厳しい(そもそも自給率なんてほぼゼロなわけですから)わけであって、そう考えても、東京都は封鎖されてもよいが、地方への拡散を何とか防ぐ事で日本全体としての安定を確保する事の方が、東京都民の安定にも繋がるという事は、少なくとも震災でも学んだはずなんですが、いまだ学習しないという事が実情のようです。

 

震災時は東日本で不足した一定の物資は、影響の少なかった西日本から移動させるなどの対応も行っていました。ですので、震災後しばらくすると東京での物資不足も解消されましたし、東京都自体も他の自治体の支援に回る事が可能でした。

これがもし同時多発的に日本全体で影響を及ぼし始め、日本全体で自粛するという状況になったならば、おそらく真っ先に東京が物資不足で混乱(というか、本来不足していない今ですら混乱が始まっているわけで)する事になるわけですからね。 

 

まぁ、冷静さは必要ですが、私は同時に大胆さも必要だと思いますし、自粛はできれば最小限の期間にまとめて行って欲しいタイプの人間なので、こういった考えに至るわけで、正しい、正しく無いという議論をするつもりはありませんので念のため。