何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

今頃マイナンバーの仕組みについて批判するのは余りにも政治に無関心過ぎ

 

10万円、何度も申請できちゃう?本末転倒のオンライン [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

世帯情報を管理するのが自治体なのはそもそも日本の仕組みの問題。政府主導で一元管理する方式を少なくとも臨んだ人は少なかったわけで。これは法律や運用実務の問題で設計云々を言っている人は余りにもセンスないぞ

 

設計が悪いだの、基本的なデータの処理が理解できていないだのなんちゃってエンジニアが好き放題言っているようだが、そもそもそういった「仕組み」にするべきと決まったのは別に政府の怠慢ではない。

で、そういう仕組みである事は、そもそも「元々告示されていたし、そういった仕組みにする事で安全性という部分での理解を求めてきた」わけであって、そりゃそうなるわけで。

 

尚、私はこの問題のそもそもの原因は「マイナンバーが個人管理の仕組みであるにも関わらず、世帯単位での配布と決めた定額給付金マイナンバーで行う事を安易に推奨した政府の問題」については否定しないし、その点はちゃんと要件の違いを政府(というか、総務省あたりのブレーンが今回は馬鹿だったと思われる)が理解して、手続きのメリット・デメリットを説明すべきだったと思う。

なので、その点を批判している人は、マイナンバーの仕組みやそもそもの原因を理解できている人で、世帯情報との紐付けだの、一元管理されていないだのそういった仕組みに異を唱えている人は、少なからず設計というか企画職には向かないので諦めるべきでしょう。

 

で、これ、そもそも世帯情報が無いことには理由がある。

例えば以下のページに明確に書かれているが・・・

マイナンバー制度について : マイナンバー(社会保障・税番号制度) - 内閣府

このページの「システム面の保護措置」にそもそも書かれているように、マイナンバーは「あくまでも個人を識別する番号を発行し、それに付帯する様々な情報の処理を同番号をキーとして使う事で、情報連携/交換を効率的にする事を目的とした仕組み」であって、従前の戸籍や住民票の管理をシステム化したものではない。

なので、書かれているように、そもそもの情報や管理は「従来の分散型の仕組みをそのまま踏襲」しており、そもそもマイナンバーの開発及び設計にその部分のデータ管理は含まれない。

 

例えば、マイナポータルを使っている人は言うまでも無く既に理解している(批判している人がどの程度実情を理解しているのかさっぱりわからないが/まさか知りもせず批判はしていないだろう)と思うが、そもそも世帯に関する情報等見えない。

見えるのは個人の情報のみで、世帯に関する構成情報どころか、世帯人数すら見えない。

これは当然で「個人識別番号」の管理であって、マイナンバーとはそれだけの事だから。

 

この仕組みは一見デメリットがあるように思える(意味が無い様に見える)が、色々とこれまでの仕組みと比較すると画期的ではある。

 

例えば、世帯の情報を見る方法がないかと言えば、そんな事はない。

実は委任手続きというものがあり、これは私の情報を別な誰かに参照または操作させる事を許可するという事を宣言する仕組みで、これを行う事で、情報の参照または操作について一定の権限を与える事ができる。

この仕組みにより、例えばこれまでは本人確認できる世帯構成者であれば住民票の全ての構成者の情報が含まれる帳票の取得が可能だったが、マイナンバーではそれができない。これにより例えばマイナンバーのような電子申請の手続きにより、DV被害等により現住所を移した構成者の情報がオンラインで参照されるような事はなく、同様に、マイナンバーを利活用しようとした誰か(一応定められた政府機関を除くもののみ/正直意味はあまりないように思うが)が、参照権を取得しない限りは閲覧する事はできない。

 

つまり、取り組みとしてはこれまで「世帯」という仕組みで管理していたものを「個人」という単位に変更し、且つ、情報の参照/操作という権限については本人が委任という形で制御でき、且つ、その操作履歴等もオンラインで照会できるというもので、少なくとも今までの日本の仕組みよりは幾分現代的になってはいる。

 

が、致命的な欠点は「日本がそもそも世帯単位の管理が中心である仕組み/法律に支配されている事」と、「管理や運用の中心はそもそも自治体」という点があり、政府にも省庁にもそのデータの保有権も管理権も存在していない点だ。

 

権限がないものを勝手に管理する事はできないので当然だが申請が行われた結果としてそれが妥当であるかの確認は自治体にしかできない。

 

なお、この仕組みも一見すると非常に「アホな手続き」に見えるが、そもそも郵送であったり、なんなら窓口に訪れる人もいる事を考えれば、どのみちオンライン手続き分とそれ以外の手続き分を統合して重複排除などを行う必要もあり、結果的に今問題とされている運用になる事は最初からわかっていた「はず」だ。

 

繰り返すが、マイナンバーは「世帯」ではなく「個人に付帯する情報を一元的に紐付ける」為のものであって、そこから先の要件は含まれていない。

 

なお、こんなアホな仕組みになった原因は議論の履歴であったり、様々な団体が反対したときの資料がネットに大量に転がっているのでそれぞれ見て頂ければわかりますが「政府や省庁が個人の情報を殊更紐付け一元的に管理する事」については、圧倒的に反対が行われており、結果として従来の仕組みを壊さない、あくまでも入り口を作って情報連携の精度を高めるだけ、という謎の仕組みになりました。

 

中には「IT担当者を海外の担当者に変えるべき」のようなアホな意見もありますが、私が担当者に任命されたら即「まず、個人管理にするのであれば、分散型なんて辞めてくれますかね?え、反対が大きい?じゃぁ紙で続ければ良いんじゃないですか?反対なんでしょみんな」という結論になるだけで、おそらく外国人エンジニアなんぞに依頼したら「前提条件が揃わないのに設計なんてできないよ」で終わりです。日本人だけですよ、前提条件が整わないのに「形だけの設計や実装」なんてものをするのは。

 

結局、私たちは何か理由を付けて、もっともその多くは「陰謀論」なわけですが、反対した結果がこの「張りぼてのような仕組み」であり、個人管理に振り切れない中途半端な手続きともいえます。

 

行政の仕組みも変えるべきだし、管理方法の概念も変えるべきだし、当然法律も変えるべきだし、さらに言えば私たちの考えも変えるべきですが、誰もみな自分は変わらず相手に変わる事を「都合良く」求め、結果、無能な国民と無能な政府で無能な仕組みができあがるわけです。

 

システムを設計するとき、一番大事な事は「何を切り捨てるか」という事です。

多くの場合「アレもやらないといけない」「コレも出来た方が便利」等と、要件は膨らむわけですが、大事な事は「何を目的としているか」という1点です。

 

私は本来はこの1点は「個人情報の一元管理」であったはずが、明らかな反対がありその最も重要なポイントが否決された結果「個人情報の効率的な照会の仕組み」に成り下がったわけで、文句を言うのであれば「IT化を喜んで進める事のできな国民性」に対してでしょう。

 

当然、仮に率先して進めても万全にはなりません。

どんな仕組みも最初はせいぜい60点から80点程度が妥当な結果であって、そこから現実的な課題や改善すべきポイントを整理し随時改善してけば良いだけのものです。

それが政府であろうが、自治体であろうが、企業であろうが同じで、別に政府が進めた仕組みだから「100点でなければ許さない」等というのは完璧主義/潔癖主義も度が過ぎるでしょう。

 

そして、課題や改善点は「使われる事によって初めて明らかになる」わけであり、使う事自体に否定的な国民が多いという時点で、その改善が遅れる事は明らかです。

 

海外も同様で韓国然り、アメリカ然り、どこの国も個人のプライバシーであったり、そもそも仕組み上の問題について課題は残っていますが、その課題があっても時計の針を前に進めないと始まらないわけで、そのリスクを負えたのが諸外国であり、負えなかったのが日本であっただけの事です。

 

マイナンバーが導入されるに到る経緯には色々な議論がありました。結果としてこういった仕組みになったわけであり、その経緯や目的を無視して結果だけを批判するというのは、まさに「政治に無関心」であったり「国/自治体の体制に無知」であるわけで、もう少し自分の生活に関わる事に関心を持って、ある時になって喚くのでは無く、その時その時に、未来のこと、メリット/デメリットの両面、そういった広い視野で物事ト向き合うべきで、それができないといつまでも「陰謀論」のような話しに邪魔をされて、私たちの国だけが世界で取り残される事となるでしょうね。