何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

棋士の総意ではなかったし、それ自体が問題として問われたのがあの事件

 

 三浦の件で批判されるが、渡辺一人でなく棋界全体で決めたことだ。/結局、三浦はあれ以後、「鬼のような強さ」は復活していないんだよね。直前では「有名棋戦では無敵」だったが、以後は普通の成績でしかない。 - blueboy のブックマーク / はてなブックマーク

それは間違い。その後の調査や棋士会の議論の中でも明らかにされたように、本来組織として適切に対応すべきところを一部の棋士と一部の幹部が手続きを簡略化して行った事が問題だったわけで。結果として総会が荒れた

 

この件は既に報告書も公開されており、且つ、将棋連盟としても明確な結論を出している話であって、その事実を曲げてはいけない。

 

なお、私は本件について蒸し返す事は本意ではありませんが、余りにも事実と異なる意見については、渡辺二冠の今後の活動においても所謂アンチ(渡辺二冠に対する)との距離の取り方を適正にするためにも意見したいと思います。

 

<追記>

書いた後でも怒りが収まらない。

なお、この件は渡辺棋士にとって「でもあれは不正だった」等という事をことさらに触れるべき事ではない。本当に渡辺棋士のファンであったり、将棋のファンであるのであれば。

何故ならば、そもそもあの件の告発者は渡辺棋士ではなく、利害関係者ではあるものの、告発者は別であると本人を含め明確に否定しています。

この事を含め、三浦棋士自身もその後のインタビュー等でもう過去の事として前を向く意見を発信しています。

もしあれを未だに「でもあれはクロだった」等と言い続けたり、あれは渡辺棋士の云々などというのであれば、事実の歪曲であり、そもそも利害関係者に過ぎない棋士を矢面にまた立たせるという愚行である。

私は同事件の告発者や告発に関与した棋士の禊が済んだとは思っていないが、それであっても三浦棋士が「過去の事」としているのであれば私たちが何か言うべき事ではない。

そして棋士である以上、将棋という世界の中で強さを証明するしかなく、それで言えば三浦棋士竜王戦一組に所属し、順位戦A級に所属する一流の棋士であり、少なくとも現時点で言えば立派な棋士である事に変わりはない。そして渡辺棋士も同様で、そういった事件に少なからず関与したし、その事で私個人も彼の評価を著しく下げたが、それであっても彼が一流の棋士であり、一線級の棋士である事実は変わらない。

彼のブログを含め、将棋との向き合い方等は称賛に価すると思うし、その事実も変わる事はないだろう。

それが全てで、私たちは結局、そういった事を勝負の中から感じとる事のみを期待すべきだし、そうある事が一番だと私は思う。

無責任にネットで過ぎ去った事をさも事実のように歪曲して発信し続ける事は私はこのネット社会で適切だとは思わないし、それはすべての関係者を不幸にする行為であると思う。その事には怒りを覚えるし、強く批判する。

 

まず、あの件は処分が行われるまでの流れが明らかに異常でした。

そもそも報告書にあるように、この話はある棋士個人の意見がきっかけとなっており、その意見についてなぜか週刊誌が竜王戦挑戦者決定後にネタとして記事を掲載するという事が明らかになった為、急遽異例な措置として出場停止処分を下したというものです。

 

まず一番の異常な事として、本来出場停止処分を下すこととした流れが異常です。

そもそも将棋連盟というか、常務会は結論を下す為の確認として久保棋士と本人である三浦棋士のみの聞き取り結果を重要視しています。その際、三浦棋士は久保棋士の指摘である長時間の離籍について「記憶にない」という事で説明に窮するわけですが、その後の調査でそもそも長時間の離籍はなかったという事実も確認済みです。これは本当にあきれた話で、竜王戦という棋戦の歴史と重さを考えればなぜその程度の事を確認しなかったのかというレベルの落ち度です。普通、双方の意見がズレているのであれば事実確認を行った上でどちらの主張が正しいのか確認すべきでしたが、常務会はそれを行いませんでした。また、普通であれば竜王戦の対戦相手である渡辺棋士や問題を提起した久保棋士以外からも事情を聴取するなどの対応もすべきで、事実として疑惑(ソフトとの一致率が高いとされたもの)が持たれた4局のうち、3局のみ問題とし、本来第三者として客観的な意見を述べられる丸山棋士の意見は重要視されていません。

なお、これだけ重い決定を行うにも関わらずこれを一部の関係者と常務会を緊急で行い一方的に決定します。なお、この時の常務会は理事の自宅で一部の関係者のみで行っておりこういった行動もガバナンスの観点で問題であったことは言うまでもありません。

これは報告書でも具体的に触れられており、そもそも類似性が疑われたのは20局のうち4局であり、それですら誤差の範囲として許容できるものであるとの結論です。で、なぜ第三者委員会ではそういった結論になったのに常務会ではそうならなかったのか、という点でいえば、結局その一致率や問題の立証を行ったのが全て告発の関係者であったという点が非常に問題でした。

 

特に丸山棋士への確認が軽視された点は非常に重く、この時将棋連盟は事実確認をすることも含め連盟職員が三浦棋士との対局を監視していた事も明らかになっています。しかし、その時不正が行われた可能性はないという結論があったにも関わらず、それでも一部の局では「一致率が高く怪しい」ので処分すべきとして取り扱われます。

これは一般社会でいえば「疑わしいので事情聴取や家宅捜索をしてみたが、結局何もできませんでした。でも怪しい事に変わりはないので、証拠はありませんが私の分析結果をもって逮捕します」というようなものです。これがどれだけ異常な事であるかというのは言うまでもありません。

前述のとおり、そもそも久保棋士の指摘した長時間の離籍はなかった、且つ、怪しまれた局のうち一部のみを検証結果として取り扱った等異常な対応であった事は明らかです。

  

その後、報告書にあるように、そもそも問題とされた長時間の離籍は存在しなかった、そしてそもそも一致率が高いものについても事前研究が寄与している事が明らかになったという事が明確に報告されています。

 

例えばこれは、Abemaの最善手表示がありますが、あれとの一致率でいえば渡辺棋士も藤井棋士もかなり高いわけですが、だからといって将棋ソフトを参考にしている、とは誰も思いません。普通は「参考にしているソフトはあれだろう」という推測が立つ程度のもので、当時のソフトはある程度傾向が偏っていた為、それを研究に生かしていたのであれば類似の手筋を導きだす事は普通にありえます。

実際、現在の戦型は以前は不利と思われた状況からでも実は有利な展開があるという事があらたに分かるなどし、どんどん見直しを図り新手が見つかる等本当に活用が積極的に行われ、その最たるものがまさに藤井棋士であるかと思います。

 

なお、報告書をちゃんと読むとわかりますが、関与すると思われる機器についてはかなり詳細な調査が行われています。電源の状態、ステータスの状態、アプリの状態等、報告書の内容から少なくとも素人がちょっとログをいじる程度で回避できるものではありません。なお、ログというものは整合性を取る事は非常に難しい為、漫画のように素人がちょっと削除操作をした程度であればすぐにバレます。これは企業で導入されている監視ソフト等でも同様で基本的にログの記録内容の連続性等も含め調査されますので、もしもそういった専門業者すら騙せる程の隠蔽ができたのであれば、それはもう棋士という仕事以上のスキルを持っていると思われますので、むしろ怪しまれる程度の事をすることの方が違和感となります。

 

その上で、同ソフトと過去の対局の一致率を検証し、そもそも同ソフトの公開以前の対局に対して分析を行っても、高い一致率となる対局が存在し、そもそも高い一致率となる傾向がみられる事も検証されており、その上で悪手率や検証誤差についても高い一致率という事のみをもって不正を行った事を立証する事はできないとしているものです。

 

このように冷静に取り扱えば「怪しいよね」という程度の話に過ぎず、それも全会一致ではなく一部の棋士が自分が負けたのは不正があった為であるという意見のみで、それを連盟の総会を招集する事もなく、一部の理事となぜか利害関係者のみで結論を出すという愚行が将棋連盟及び棋士会の総意であったなどという事はなく、この事も報告書内で指摘されておりブコメである棋界全体で決めた事という事実はありません。むしろ疑わしい状況がなかったわけではないため、措置をとった事はやむを得ないとしても、それを決定するにあたり正式な決議は行われていないという事も事実として触れています。

これはその後の総会での意見が紛糾した原因でもあり、なぜ総会にかけなかったのかであったり、正式な決議を行わなかったのかであったり、その前から問題として挙がっていたわけなのだから、先に規定を整備する必要があったにも関わらず、特定の棋戦に対する措置の為だけに常務会と一部の棋士の意見だけで処分措置を強硬したことはむしろ棋士会を軽視しているのではないかという問題につながります。

結果としてそういったガバナンスの問題(もともと連盟の理事選ではいろいろと対立もあった事は将棋ファンならご存じの事)も含め会長等複数の理事が辞任する事となります。

 

また「鬼のような強さはない」という意見を述べているが、これも将棋ファンのうち一部の意見に過ぎないかと。

そもそも一部の棋戦でのみ鬼の王な強さというのであれば、竜王戦の渡辺棋士の強さは異常であったわけで、それですら今現在はなくなっている。ではそれは不正をしていたからなのかと問われればそんな事はない。

 

例えば、先日藤井棋士は同期の棋士になかなか奇妙な手筋から負けを喫したわけだが、それをもって「強い相手にだけ勝つ」といった事を言う人はいない。

実際、勝率やレーティングを見てもわかるように、2016年以降で言っても実は復帰後の2017年が最も勝率は高く上位のレーティング者への勝ちも普通についている。

というか、将棋ファンであればわかるはずですが、三浦棋士の勝率でいえば比較的2016年は不調であったとしで、それが疑惑の原因となったわけで、これはもう雰囲気で「彼が今の状態で勝つはずがない」というものに過ぎません。2017年は24勝15敗、2018年は17勝18敗、2019年は22勝20敗という形で普通に勝ち越し又は勝ち越しに近い勝率となっている。

また、2019年だけを見ても上位のレーティング者に対する対局では22戦中9勝と勝ち越してはいないものの、決して負け続けているわけでもないわけで、この中には羽生棋士や藤井棋士、斎藤棋士、豊島棋士、広瀬棋士、佐藤棋士等名だたる棋士が含まれており、さらに言えば渡辺棋士も含まれています。

 

結局私はあの事件は将棋連盟のガバナンスの酷さと派閥や仲の良さという本来持ち込んではいけない価値観を優先したことが最大の問題で、仮に疑わしいとしても、さらに言えば自分たちが疑わしいから監視もしたわけで、そこですら不正が確認されなかった等の結論があったにも関わらず、正式な手続きを踏まずに団体としての権利を行使したという事がむしろ事件であり、本来の手続きを正しく進めていれば事件にすらなっていなかっただけの事です。

 

そして「疑わしい」から罰するべきというのもおかしな話で、「罰するべき事があるので罰する」とすべきで、疑わしい程度であったり「一致率が高いから」程度の事、つまり状況証拠があれば罰して構わない等という事になれば、私たちの生活はあらゆる事で第三者から罰せられる事を許容するべき世の中となり、非常に恐ろしい事になります。

 

おそらく、今後もソフトを活用した棋士はでてきますし、それにより一致率が高い棋士もでてくるでしょう。時には特定の棋戦のみで勝つ棋士や高い勝率であったり、場合によっては特定の状況下でのみソフトとの一致率が高い棋士もでてくるかもしれません。

 

そういったときに必要なのは「でも、不正ができない体制になっているよね」といえる環境であったり、勝手な思惑で他人の人生を踏みにじるような行為や発言が垂れ流されない、そういった環境が整備される事を望み、逆にそういった誰かを追い込むような行為があった時に、そういった事をすべきではないといえるファンであるべきだと私は思いますが。