何気ない記録

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規約にあれば問題ない、はもう古い

 

LINE、中国での開発を終了 保管データは日本へ完全移行 - ITmedia NEWS

規約にやんわり書いてあれば問題ない的なコメントがあるが、現在の日本であっても重要事項について明示的に同意をとらない場合に、その結果消費者に不利益が生じた場合は同意があったと見做されないのは多々あるのよ

 

これ、コメント欄を見てびっくりしたんだけど、未だに規約に書かれていれば問題ない、と本気で思っている人が多いことにびっくりした。

 

いや、一般的な取り決めについてはそれで問題無いし、消費者側の確認漏れについても責任は消費者にあると見做されるんだけど、重要事項であったり、特に、その事を契約者が十分認識していなかったことにより、消費者に対して著しく不利益が生じるような場合は、規約に書かれていたという事実だけで消費者と争うのは昨今難しくなっている。

 

なお、この事は、労働紛争でも同様で、昔は労働者代表が同意した、という会社側の一方的な事実だけでもある程度押し切れていたが、昨今ではそもそもの労働者代表の選出方法に問題がないのか、また、仮に労働者代表が適正な方法で選出されていたとしても、不利益となる事項についての変更であれば、その内容が適切に労働者自身が知り得る事ができ、且つ、意思を示す事ができる状態にあったのか、という点も普通に争われます。

未だに労働者代表を形だけで選出しておけば問題無いとか、労働者代表に形だけの同意をとっておけばよい、といった昭和初期の頭でいる社労士とご契約されている企業の皆様は早めに契約を切り替える事をお勧めします。

 

話しは逸れました、このあたりの法務系実務では結構弁護士と最近は色々と議論する事となりました。

 

あるサービスで同意をとると言ったときに、例えば、重要事項は個別承諾をとる事であったり、そもそも何に対して同意するのか、何を受け入れるのか、どんな不利益があるのかと言うことが、結果として利用者に伝わらない場合、仮に紛争となった場合にそれを利用者は契約「前」に理解する事ができたのかという点も含め、サービス提供者側の言い分が通るのか、という点を協議しますが、ここ数年で、結構保守的に対応する事になってきています。

 

小さい話しで言えば、手数料を取るのであれば、その手数料が発生する事であったり、手数料の計算方式であったりが、利用者が理解できる所で確認できたのかという点もリスク回避の観点では少なくとも契約の動線上で閲覧する事ができた/閲覧しない事はなかったという状況を作ったりします。

 

個人情報であったり、業務の外部委託のようなケースについても、特に個人情報保護法に絡む話しは、一般的な範疇を逸脱するような事、例えば個人情報を利用者が想像しうる形以外での活用をするような場合、その活用する事実をただ規約の中にそっと書いておけばいいというだけでなく、それが一般的でない場合は、そういった事について少なくとも注意を促すような事を検討するよう、通常は弁護士から指摘を受けます。

 

今回の件がそうであった、つまり、個人情報を想像しない形で利活用するような契約であったとは思わないですが

 

一般的、と言ってしまうと曖昧ではありますが、普通はサービス提供者に対して契約の為に提供された個人情報や、契約後に積み重なる利用に関する情報というのは、そのサービスの提供や維持管理についてのみ活用される事を利用者は期待しており、当然ですが、それを逸脱するような形での利用や活用は想定していません。

ですから、そういった、通常の利用から逸脱するようなケースにおいて、利用規約に「個人情報活用すっからね?」と書いていれば問題無いかと言えば、紛争になってみないとわかりませんが、リスクについての提示がなく、且つ、利用者の想像を超えた活用であったり、不利益が生じるような事実が合った場合は、その事実が利用者に十分に告知され、同意の意思を示す「前」に理解し、理解の上で同意するという選択にいたったのかという事が結構議論されます。

 

実務においては「書かれています」というのは当然であり、その先にはどのように書かれているのか、書かれている内容にどのように同意しているのか、同意した内容は一般的な商習慣に関するものだけなのか、それとも利用者から見た場合、想像する事が難しい内容が含まれているのか、仮に利用者に不利益が生じる場合、その不利益が生じる可能性がある契約である事が契約前に理解でき、自らの意思で判断する事が可能であったか、等、そういったレベルまで企業側としても十分検討する事が必要な時代になっています。

 

当然、紛争に到らないとこういったことは中々わからないもので、普通は、そう簡単に紛争には到りませんから、そういった事は、常に新しい判例を確認し、類似サービスや類似法令上で紛争が起きていないか、起きている場合は、争点を確認し、それが自社に影響を及ぼすのかどうかを判断し、影響する可能性があれば常に改善、といった流れが業務上必要になります。

 

LINEに関して言えば、日本は欧州に比べればまだまだ甘い物ではありますが、段階的に厳しい条件や実務ベースでの管理が定められるようになっており、その他でも消費者との契約一つとっても昔のような契約書があれば問題ない、といった形は単純には成立しません。

特に個人と法人であったり、雇用主と労働者のような一定の力関係が働く構図においては、前述のような「知り得る機会があったのか」であったり「内容を理解した上で、本人の意思で同意したのか」といった点が少なくとも争われますので、そういった点について「いやー、、、これは、、、」となるようであれば、改善が必要であると考えるべきでしょう。

 

当然ですが、専門家である弁護士との間では常に確認を行い、解釈であったり、その対応方法について問題がないのか等、細かく連携をとる必要があり、そこまでやっても、やはり最後は紛争が実際に起き、争って見なければなんとも言えないというのが現代の状況であると感じます。

 

ですので、ただ単純に「書かれてるよね?」というだけでは適切な対応であったとは私は言えないと思いますし、実際それで対応するのはちょっと時代遅れであるかと思います。