何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

カーシェアマニア氏の約款引用に関する考察

 

パーク24、善意の上に成り立つカーシェアのバグを突かれると「そこになければないですね」でサービス終了 : 市況かぶ全力2階建

カーシェアマニアの反論が斜め上なんだけど、管理責任を負う側は免責条項を設けたとしてもその管理責任を放棄出来るわけではないが。あくまでも通常の管理や負うべき義務を負った上での免責で管理不行き届きは別だろ  

 

先に述べるが、仮に各サービスにおいて個別の取り決めを行い、優先すると宣言したとしても著しく不利益が存在する取引形態であったり、また、消費者に不利益が存在する取引であるにも関わらず、その不利益の存在が消費者に理解されない状態のまま契約をした場合に、その契約の約款が全て有効となるわけではない。

個々の契約は、あくまでも法律の中で定められた範囲の有効性があり、それらは法律の制限を超えることはできないわけで。

 

で、非常に興味深い意見であった、つまり、仮にサービスが正常に提供できない状態であっても、利用者はその問題を指摘できないのが当然で、そう約款にも明記されており、問題を指摘するのはクレームに過ぎないという主張だが、通常そのような約款は作ることができるが、そもそもサービス提供が成立しない状態では、契約の成立自体が怪しいのでそんな無謀な契約の立て付けを作る弁護士がいるとは思えないと思った次第で。

 

で、読んだ。

朝から。

使いもしないサービスの約款を。

全部。

 

まず、契約の成立とその責任についてですがそもそもこの約款通りだと、実質的に予約とは一切なにも保証しないという前提とはなります。

契約の成立は第8条の1項を読むと「ステーションにおいて、会員自らが当社の定める方法により借受開始手続を行うことで、予約契約が完結し、貸渡契約が成立」とある為、予約をしたとしてもそれ自体に消費者側にメリットはありません。が、利用するに当たっては第7条の1項にあるように事前に借受条件を入力して貸渡契約の予約申込を行うものとあるので、予約行為を無視する事はできません。

なので、予約行為とは利用する意思を消費者が提供主に示す行為であり、契約そのものとは連帯しないものであると考えられます。

 

では、消費者側はこの状況に対して、つまり予約自体では何ら保証されていないという事を泣き寝入りするしかないかと言えば、まぁ、そうはなっていないですね。

まず、第8条の3項では、第8条の2項の記載(つまり、カーシェアマニア氏が引用している免責事項のような部分)については「カーシェアリング車両を会員に貸し渡すことができない場合又は貸し渡すことが客観的に適切でないと判断される場合には、当社は、会員に対して予め定めた方法に従い速やかに通知するものとします。」とありますので、例えば、車両そのものが存在しない事であったり、車両が存在しても利用する事が難しい状況である事については、サービス提供主が自ら速やかに契約が結べない事を通知する義務を負います。

 

で、この流れで第36条の1項を読むと、サービス提供主は会員に対してGPS機能を用いた管理について同意する事を課しており、その目的としてはいろいろありますが「貸渡契約の終了時に、カーシェアリング車両が所定のステーションに返還されたことを確認する場合」においても利用すると説明しています。

 

つまり、大前提としてサービス提供主は、予約時点でサービスが提供出来るかどうかを判断し、少なくとも通常の管理状態(仮に前後に複数の消費者との契約が存在したとしても、それらが通常の契約上の管理下にある)であれば、問題なくサービス提供が出来る事を理解しており、その為の仕組みの利用(GPS機能による車両の管理)に同意を課していると理解する事ができます。

 

当然ですが、GPS機能を使っておらず、車両の状態を把握していなかった、または利用できずに車両の状態が把握できないという事は否定できませんが、ただ、その場合、サービス提供ができる状態であることを確認できていない為、約款に従うのであればサービス提供主は速やかにその事実を把握した時点で、その事を告知する義務を負います(第8条の3項)。

 

当然ですが、速やかとは、知ったら直ぐに、という意味ではありませんから、実務上は例えば別な消費者との間での貸渡契約が終了し、その後改めて別な消費者との間で貸渡契約を結ぶまでの間の何れかという事にはなるわけですが、特段の免責されていない話しとしてサービス提供主は当然ですが車両管理の責任を除外(まぁ、社内清掃とかしないからね?とはありますが)していませんから車両が存在するのか、しないのかという事を特段管理しなくてよいわけではありません。

 

管理するとは言ってない、と反論されそうですが、そもそもこの「タイムズカー貸渡約款」とは「当社所定の保管場所に保管されている貸渡自動車を第2条に定める会員に貸し渡し、会員がこれを借り受けるシステム」に関する取り決め(第1条の1項)であり、約款の適用自体がそのサービスに於ける取り決めなわけですから、「当社所定の保管場所に保管されている」という前提条件については、少なくとも社会通念上、一般的に負うべきサービス提供主としての義務を逃れる事はできないと考えられます。

 

ですので、サービスの大前提としては「当社所定の保管場所に保管されている貸渡自動車」が存在する事が前提で、その前提条件が充足されることに対する努力義務(約款上特定条件下での免責はある)は負う為、無くても良いなどという事は当然ありませんし、それを前提にサービス提供主が「なかったですか、そうですか、それは残念ですね」等といえるわけでもありません。

 

なお、本件とは関係ありませんが、仮に「そこの車両があるとは言ってない」という事を明言したとしましょう。それこそ文字通り、我々は管理もしていないし、車両の有無は認識してなどいないと。

その場合、商品が不存在であるにも関わらず契約行為について勧誘していたというなるので、それはそれで違う法律に違反しそうな案件で、違う方向でマズイ事になるかと思いますので、流石にそういった抗弁はしないかと思います。

あくまでも、車両はそこにある前提ではあるが、何らかの状況で車両が存在しない事もありえるので、その時は、という話しであって、存在しなくても良いわけでもないですし、存在しない事を放置していいわけでもありません。

 

もっとも、少なくと意図的に管理を放棄している場合を除き、仮に車両が所定の場所に存在しなかった場合等であっても、原則として一切の賠償責任は負わない事は約款で明記されているので、消費者側としてはそういったものである、とは思う必要があります。

 

なお、これも勘違いしていそうなので追記すると、賠償責任を負わないという事は管理責任について追及できないというわけではありません。

ただ単純に約款記載の事項に準拠している限りはその範囲での瑕疵も含め、そこから生じる賠償責任を負わないというだけであって、約款記載の事項や記載の有無にかかわらずその他関連法規に準拠しているのかという点は当然ありますし、準拠していなかったり、違反している場合は当然その事に意義を唱える権利はあります。

 

結局のところカーシェアマニア氏の意見のような斜め上のもの、つまりそこに車両がなくてもそういったものであって、それに文句をいうような消費者はただのクレイマーだという話しではなく、単純にそもそもこのサービスは車両管理がなされる前提(なおここでいう車両管理は、サービス提供者もそうですが消費者も一定の責任があるので両者の責任/例えば車両点検の義務等も課されています)について、どのように管理なされているのかという話しで、例えばGPS機能で車両管理するからね、といっているのであればそれをちゃんとなさってますか?とか、会員資格について適切に管理されていますか(第6条の1項の11、12、15及び17による会員資格の停止または取消権の行使)という話しで、特段カーシェア独自の話しでもないかと思います。

 

つぶやきの中にもありましがた、この問題は仮に1度そういった事が起きる事は止むを得ないとして、その場合、不適切な行為を行った会員が適切に処理されていなければならない、逆に、それが処理されていない場合、同ステーションを利用する全ての会員が不利益を受け続ける、という点が問題になるので、少なくともそういった不適切会員に対して適切に処置を行う事が必要なわけで、それがなされているかどうかが重要な話しかと。

 

一応約款上は返還規定により指定された場所に借受開始時の状態で返還する事を指定しており、仮にそれが守れない場合は届け出ろとあるので、本来は約款上の取り決めをサービス提供者と消費者が(当然ですが、双方が負う義務となる)遵守していればよいわけです。

つまり、第31条、第33条、第34条のそれぞれにおいて、約款に定められたとおりの管理がなされている限りは問題ありません。

つまり、仮に車両の返済を怠った場合や、車両の状態が適切な状態でなかったとしても、その事に対して約款上の記載に基づき対処している限りはサービス提供主に落ち度はないといえるわけですし、同様に、消費者側も約款記載の内容に期待するサービスを受ける事ができると理解できますからね。

 

なので、結局は「お前らちゃんと管理責任負ってるよね?」という話しでしかなく、それ以上でもそれ以下でもない、本当にごくごく一般的な貸借契約の話しかと思います。

 

約款は一方に都合良く作る事も可能ではありますが、著しく不利益が生じる契約については、少なくとも消費者が相手の場合、それが全て認められる事はまぁないかと。

また、どのようなサービスや商品に関する契約でもそうですが、社会通念上それがどのように理解されるか、どのような状態が期待されるか、という点については争われますから、ネットでいうところの「あるとは言ってない」という事を結果として宣言する事はできますが、それがそのまま受け入れられるわけでもない(ない事の正当性の検証)という事の理解は必要です。

 

そりゃそうよね、流石に弁護士がチェックしているわけで。

 

以上、読書おわり。