何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

転売の問題は経済や経営に関する論理的思考の基礎だと思うが・・・

 

池田信夫 on Twitter: "転売屋がまとめて買えば、それは最終的に消費者に売れるんだから同じこと。プラモやってるガキは、この程度の初歩的な論理もわからないのか? https://t.co/z46szbl27w"

この程度のロジックで間違うというのもお気の毒。定価の倍で転売される場合、購入者が実数の半分でも転売屋は元が取れる。つまり需給のバランスが壊れ信頼を損なう。且つ、それが市場形成を行う場合市場も破壊される

この手の話題は色々な見方、考え方があるので、どれが正しいとは一概には言えないが、池田氏の意見は明らかに間違っている。

 

まず、この発言の趣旨は、例えばPlayStation5あたりで考えると判りやすい。

まず、ソニーの本体の視点で見れば、例えば毎週1,000台出荷可能として、それが仮に50,000円で販売されているとする。

この時、これを全て転売屋が売価である50,000円で買えば、当然PlayStation5の販売に関するソニー自体の売上に影響はない。 

一方で、転売屋は当然ながらそれを1.5倍や2倍、場合によっては3倍といった利益を上乗せして転売を行う事となる。

 

同氏の意見はココマデの視点で止まっており、当然だが、市場はそれに限定されない。

 

次に考えるべきは本来の消費者の行動となる。

仮にPlayStation5の需要が毎週1,000台の出荷を十分に消化できるだけの需要があったとする。

この時、PlayStation5が仮に継続的に出荷と販売が続けられていれば、同製品に関する市場規模は常に拡大を続ける事となる。

これはソフトウェアや周辺機器の売り上げの増加にも寄与し、さらにソフトウェアの開発計画にも影響を及ぼす事となる。

さらに言えば、同社はPlayStation4からPlayStation5へのメインストリームの切替えも視野に入れているわけで、そのサポートアンドサービスに関するコストや投資についても影響を受ける事は言うまでも無い。

 

さて、ここで重要なのは、この話しに転売屋がどう影響するかという事。

前述のとおり、転売屋は価格を1.5倍から2倍、3倍という価格として転売を行う事となる。この時この差額はソニーの売上とはならない。

 

その一方で、消費者は転売屋が出品した商品を全て購入するわけではない。

ここで重要なのは、転売屋はそもそも全ての商品を消化する事を前提にしておらず、極論言えば、ある程度売れ残る事も想定して売価を設定している。

実際には、仮に売れ残ったとしても、中古市場に流す等する事で実際には購入価格又はそれに近い対価の回収を行う為、値下げする必要はない。

 

その結果、何がおきているかは明白で、本来の投資効果が得られない事となる。

毎週1,000台の供給により、同製品の市場は継続的に拡大する事が期待されたが、実際にはそれ以下の台数でしか市場には出回らない。

結果として同製品を対象にする企業の増加は加速せず、その結果として同製品の人気にも影響をきたす。

その影響は製品開発や追加開発に関する投資にも影響を及ぼし、それは継続的に負の影響を及ぼす事となる。

 

前述のとおり、次世代機への切替えが進まない以上、旧型機の維持を行う必要があり、投資計画やコスト管理にも影響をきたす。

 

それだけではない。

本来50,000円を投資し、残りの資金でソフトや周辺機器を購入する事を考えていた商品者は、本体の購入に100,000円掛けた場合、当然その分の資金が目減りする事で、その他の購入を諦める事となる。

結果として期待される波及効果が得られなくなり、これは明確に販売元への打撃となる。

 

で、ここでよくある反論が「それはPlayStationのような製品だからであって、パンフレットや単純なグッズなどでは影響はない」という話しがある。

 

が、それも同様の話しであって、例外はない。

 

そんな事はおそらく経済学を学校という教育の場で学んでいる学生でも判っている。

 

どのような価格帯の製品であっても、直接的な影響と間接的な影響の二つが必ずある。

パンフレットが買えないという事は何にも影響しないと思われがちだが、これも同様で、映画ファンという括りの市場でみれば、同ファンが同市場で消費できる予算は限られている。

パンフレットが転売されるという事は、その市場で消費される金銭は同じであっても、その余波が別な作品の視聴を取り止めたり、パンフレットと合わせてDVDやBlu-rayの購入を考えていた消費者の消費行動を取り止める切っ掛けとなるなど、負の影響は連鎖する。

 

ダメな人の経済の視点として、全ての市場で消費されたお金を合算すれば、その総額は変わらないという考え方だ。

 

ダメな理由を説明する必要は無いほど無意味な理論で、そもそも投資に見合う効果がなければ企業は継続的な投資や開発を行わない。

それ以前に投資に見合う効果がなければ企業は成長する事ができなくなり、その企業が関与する市場は停滞する。

 

転売自体により消費される金銭の総額に影響は及ぼさないが、それは、全ての消費者のお財布のサイズが変わらないからであって、その消費されたお金が誰の懐に入るのかというのは全く違う。

 

そして、その財布とは、投資した人間に効果を及ぼさない限り意味をなさない。

 

例えば、転売屋が儲ければ、その転売屋はその儲けをどこかで消費するわけだから、全体でみれば動いたお金の総量は同じ、というのは間違っている。

 

A社が開発・投資した市場からA社が期待する効果を回収できない限り、A社の投資は失敗したと見做されるし、同様にその市場で直接消費される金銭が適切に循環しない限りは市場は停滞又は縮小する。

 

PlayStation5を転売した結果儲けたお金でワインをがぶ飲みされても、ゲーム業界は拡大しないし消費者がより投資する動機にはならない、そしてそんな状況に企業は追加投資をしたいとは思わない。

 

これは高校生でも判る基礎的な話し。

 

当然、切り口を買えれば別な整理もできるが、基本的に転売によって市場が維持される事は限定的な条件が無い限りはありえない。

 

以上。