何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

実務経験者のエンジ二アだとそれ程否定できない仕組みではある

 

ワクチン問題、新システムに一因 2種併存で在庫把握困難 | 共同通信

完璧じゃなくてもいいから迅速に開始しろ→不十分な仕組みだと叩かれる。不足機能を既存の業務に影響を最小限にし追加開発→ちゃんと一元管理しろと叩かれる。では統合するシステムを開発→無為が多すぎと叩かれる。

 

確かに最初から統合化されているシステムである事がベストだし、そもそもそれぞれのシステム自体にも問題があるのも事実だと思う。

批判すべき部分は批判すべきで、改善が必要な部分は確かに多い。

 

が、そもそも今までの日本のスピード感でいえば、この対応って相当早いものだと思うんだよね。僕が自治体だったり公共事業の対応してたときなんてどんなに急いでも1年以内にサービス開始なんてありえなかったし。

それは開発云々ではなく、検収自体が完了しないので、そもそも予算執行に到るという部分から難しかった。

 

で、システムの大きな分割として、時系列に沿って分割発注するという事自体はシステム設計として間違ってはないし、段階的にリリースし、それを後で統合するという仕組みも間違ってはいない。

実際この手のサービス構造を持つシステムで事業展開を開始するなんてこともあるし、特に実績の管理の部分はどんなサービスでも比較的運用を開始しなければ使い勝手もそうだが、管理すべき指標もブレやすい。なので、暫定的な運用方法を設定した上で、本格的なものは後から対応というのは普通にあるし、実務的なシステム開発の現場ではそれほど否定するものでもないと思う。

 

そもそも今回の対応はV-SYSが先行した事は批判できない。

実際問題今の現状を見ても判るように、自治体によって全く接種スピードは違うし、最初の頃なんて今以上に自治体間での差は顕著だった。

そういった部分も含め、まずは自治体からの希望の聴取と、それに対して国が抱える在庫や供給スケジュールとの調整を取る事が最優先なわけで、その点で、V-SYSを先行させてまずは需要の把握と供給スケジュールの立案をするという事は、システム設計上も運用設計上も間違っていない。

 

おそらく問題なのは、その後実績管理/把握を行うVRSを内閣官房主導で完全な別システムとしたところが一つの問題ではあったと思う。

厳密には、別システムである事自体は問題無い。

どうしても段階リリースとは言え、何かしらの影響により需給の管理を行う運用まで混乱してしまえば、迅速な接種自体が開始できないわけなので、そういった意味でも、運用設計上、例えば接種実績は最悪後付での登録でも1回目の接種自体の実施開始には影響しないと判断すれば、分割したシステムとして構築する事はそれ程間違っていない。

この考え方も比較的規模の大きなシステム設計や開発では行う手法で、小さいシステムであればそれ程気にならない(例えば単純な台帳管理程度であれば)不具合も、自治体を繋ぎ、それを国民の総人口を相手にする規模で、且つ、人的ミスが発生する前提でデータを管理するという前提を考えればある程度疎結合な仕組みとするのは比較的普通の考え方ではある。

ケチがついた最大の原因は単純に使い勝手が統一されていない点だったり、登録方法自体の不備(支援機能であるバーコードが使い物にならない等)があった事により、全否定される理由になってしまっているのだと思う。

 

その上で、今回それらを統合する仕組みを後追いでリリースすると言うのも、大規模なシステムでは結構普通にあるし、そういった意味で、私はこの流れ自体はそれ程否定するものでもないかなと思う。

 

そもそも、日本人は完璧を求めすぎる。

諸外国でもシステム開発が追いつかない部分は人海戦術で、なんてことはやっている部分であって、それを日本ではもともとIT水準が低いにも関わらずシステム化して対応しようとしたわけで、その時点で完璧なものになるわけがない。

確かに投じた予算を考えれば「もう少しまともなものが作れるはずで、ちょっと上流工程を担当された方は、業務経歴書にこれのっけちゃうと、センスを疑われるレベルの実績ではないですかね」という雰囲気はある。

が、それを含めても、まぁ、そもそもIT水準が政府だけでなく、国全体で考えても低い日本で、これ以上の仕組みを求めるという事自体がそもそも無理筋だと思うのだが。

 

だいたい、自治体は国が作った仕組みは使い辛いというが、いや、君たちが独自に作っている/発注しているシステムだって結構酷いじゃない?地場のF系やN系がプライムでやってる仕事だって、そんなに誇れるような素晴らしいシステムじゃないよね?

他所のシステムだと「こんな使い辛い」というのであれば、よほど自治体が独自に発注されているシステムは使い勝手も仕組みもコストも素晴らしいものだと思うのだけど、僕が理解している限りは、紙の運用をそのままIT化したようなもので、あんまり厚生労働省内閣官房の主導したシステムを批判するほどのものでもないと思うが。

 

僕がN系の仕事で都庁のとある部署で入札し落札した時のシステムなんて、前システムの開発者は個人で、その人音信不通ですから、同じのつくって下さいっていう要件が、落札後に知らされたり、作るべきモノのロジックをそもそも担当部署の方がしらないとか普通にあったし、止めは、都庁の2つの角の間でデータ飛ばすのに内部ネットワークではだめなので無線でなんとか届かないかとか、なんか電波法違反的な要望されたり(てか、そもそもそんな要件は入札仕様には存在しないのだが・・・)と、都庁ですらそんなレベルの仕事だったわけで、地方ではもっと熾烈な仕様も御座いましたが・・・。

 

結局、今の日本の組織事態が変わってこないとどんな技術も私は生かせないと思っている。

 

開発者のスキルだけではなくて、運用する担当者の頭もバージョンアップしてもらわないとダメだし、当然、それを承認する立場の人間も同様にアップデートしてもらわないとダメ。

そして、国民も全員がそもそも大規模で多数の機関を跨がる仕組みというのは、どんなに配慮して作っても絶対に批判が来るわけで、万全な仕組みもなければ、スピード・信頼性・コスト、これを全て希望をかなえたモノというのは理想ではあるが、それは絵に描いた餅であって、民間でも大抵の場合は、何かしらを犠牲にしていずれかを選択するような現状が実態なわけです。

 

そういった意味で、今回のシステム発注だったり、結果として出来上がったモノについて言えば、批判すべきところはあるが、一方で理解すべき点もあるし、それを改善するのであれば、全てがアップデートされないとまぁ無理よね、という感じですか。

 

デジタル庁については、既にちょっと雲行きが怪しい感じもしてきてはいますが、これも段階的に成長させるような継続的改善を行うという気持ちで向き合わないと、住基ネットマイナンバーのような、結局なにも実現できない日本という現実と永遠に付き合わないといけない未来が待っているわけで。

 

私は全否定する事も、完璧主義になるのもお勧めしないし、もうちょっと現実と向き合いながら、否定するという姿勢も持つべきではないかと思うのだけど。