タイトル以上でも、タイトル以下でもないので、既に言いたいことは終わってるのですが。
まず、これまで事業主扱いとして許容されていたものが、実質的支配下にある状況下や、明らかに雇用者の義務の回避として用いられているケースについては、実務的にそれを負うべき事由があると判断される場合は、雇用形態を問わず労働者の権利を保障すべき、という流れはこれはもう結構前からトレンドなので、この点については前時代的ではない。
一方で、そもそもこの雇用形態は労働者の空き時間を利用しようというものであって、本質的にはそこでフルタイムの仕事を目指すというものではなかった(はず)のであって、それがただの配達員というフルタイムの労働者を雇用しなければならないとすると、ビジネスモデルとしても崩壊しているし、同時に働く側の視点としてもただのフルタイムの雇用先として選択しているわけで、だったら現実問題もっと働きやすい所をなぜ選ばないのか?という意味でも、まさに前時代的な価値観で選んでいるわけで、まぁオワットルという話しになります。
そもそも、この手のモデルはそういった管理費が生まれないことで比較的安価にサービスを提供しつつも、企業も利益を出せるし、一定の労働者への報酬の支払いも実現できます。
いや、普通に考えて、専業の運送会社があれだけ規模経営で必死になっているわけで、ただの注文受付宅配サービス会社として、非効率的なサービスをあんな安い価格で回したら当然企業もサービスなんて維持できないは明らかです。
なので、企業側として本来は現実的な規模でサービスを展開すべきだったわけですが、ビジネスの世界にはあらゆるものに勝る幾つかの事があり、その一つが「スケールさせる」という謎のキーワードで、このキーワードが多く使われているビジネスモデルというのは、基本的には「博打である」という話しなのですが、その言葉の魔術を安易に利用した結果、空き時間を活用するはずのモデルが、実質的にフルタイム雇用するレベルの稼働を必要とする状況に陥っているわけで、それはそれでバカっぽいところはあります。
ただ、ビジネスについてはそれなりの規模まで成長している事は事実なので、おそらくどのような状況になってもとりあえずは進めるわけですが、管理費が掛かることとなれば実質的に得られる報酬に対して変化が生じます。
今までは会社として労働者を雇用していなかったので負担すべき費用がない前提でビジネスを描いていたわけで、それを負担する事になればその計画を見直すわけですが、その場合は原則3つの手段しかありません。
1つはサービスの提供価格の見直し、つまり値上げです。
これは一番単純あり、且つ、もっとも多く選択される方法です。
通常はこれが一番よい方法なのですが、件のジレンマは報酬は注文数により決まるところがあり、値上げという行為は大抵注文数や利用数の減少に繋がりますから、実質的に労働者の報酬は目減りします。
2つめは労働者の報酬・給与を管理費を含む形として見直す方法。
実際これはあまりとられませんが、ただ、一般的に事業主への発注は法人間の取引と同様ですので、報酬の中には相手方の経費も含まれます。請負契約の中では、事実上その仕事を請け負い完遂するために必要なコストを含み支払っているという事になりますので、それを実質的にそうではなく、雇用者と労働者という位置づけで社会保障を含め、企業は社会的コストを負担する事になれば、当然ですが当初の報酬の中に含まれたコストからそういった部分は控除しての支払となります。
この点は個人事業主になった人にはわかるのですが、頂く報酬には全ての掛かるコストが含まれているわけで、例えば受託してそれを再委託するからといって、依頼主に再委託先の社会保障費を下さい、とはいえないので、当初の契約にそういった事も含めて報酬の取り決めをする必要があるわけです。
ですので、おそらく労働者としての権利を保障する、という事については雇用主側はあらがうことはできませんが、おそらく結果として訪れるのは、フルタイムでは働く人にとってはメリットがあるものの、空き時間を活用する人にとっては実質報酬が削減されるだけの契約改定になるのだろうなぁ、とは思います。
3つめは一切合切を企業利益から捻出し円満解決する方法。
なにも説明する必要はありませんね、掛かるコストを全て企業が自らの利益から捻出するので、労働者にも不利益はありません。
実に素晴らしい、のですが、大抵この選択はとられません。
結局1または2の何れかなのですが、仮に2の場合も「フルタイムで働く人」が実質同社を支えているという事であればビジネスモデル自体が崩壊しているのだろうと思うので、ビジネスとしてはこれも敗北でしかありません。
つまり、これは今の現状そのものに陥った時点で法人側も労働者側も前時代的な価値観の縛りから抜け出せなかった、という味方そのものは正しいわけです。
ただまぁ、労組を組むという事自体は実際昨今の有り様ではありますので、その行動と、その先にある結果というのは企業側の理念を労働者側が理解できていなかったという一面はあるものの、実質的には企業側が自社の理念を理解できておらず、それに反する環境でしか「スケール」させる絵しか描けなかったというのが本質的な部分でしょう。
ですから、企業側はフルタイムで働くような人を雇用するような状況にはなるべきではなかったし、そして労働者はフルタイムで働く先としてそもそも同社のような企業を選ぶべきではなかったというのは事実で、その責任がどちらにあるかといえば労働者というよりも、そういった人が同社の委託先に存在する事を許容する、またはそれを許容しなければならない状況に陥った経営陣の甘さだと思うので、その点は間違っているでしょう。
少なくとも夏野氏は経営者でもありますから、その部分の見方を誤るのは非常に危ういかと思います。