何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

なぜこれが"面倒くさい事態"なのか

 

やまもといちろう 公式ブログ - 川上量生さんとカドカワ株式会社に、訴訟を提起しました RT @nkawa2525 - Powered by LINE

あら、想像した通りの展開ではあるよね。そりゃ個人の属性を上場企業が社名を出して攻撃し始めるというのは流石に筋が悪すぎるし、それを上場企業の法務部門が容認したという事がまずありえない事なんだけど。アホ杉

 

法務担当者(おまけで事業担当者も巻き込み)としては非常に面倒くさい事態です。

 

これは具体的には2つの面倒な事が発生します。

 

まず1つめは、この訴え自体にはそもそも意味が無い事。

おそらく山本氏はそこをわかってやっていると思うのですが、仮にこの訴えが却下されても山本氏自体は痛くもかゆくもありません。

というのも、これ自体は自己の主張の確認に過ぎず、仮にそれが却下されたとしても"そうなんですね"という事で終わるためです。

当然主張が認められれば"ですよね"で終わるわけで、この時点では実はどちらに転んでも影響はありません。

 

で、仮に認められない場合ですが、これはまた面倒でこれが2つめの面倒な事です。

と言うのも恐らくは山本氏はこれが認められない場合であっても、その結果をもって記事を削除する事はしないでしょうから、削除を求めるのであれば山本氏同様にそれを実現するための行動が必要になります。

当然それは訴訟に至ると思われるわけで、わざわざ上場企業の法務担当者がほぼほぼ一個人の問題である本件について対応するというのは、別な問題も絡み厄介です。

 

そもそもこれはほぼほぼ川上氏個人の問題であるため、それをカドカワという法人が対応するとなるとこれはその理由についての説明が必要となります。なぜなら訴訟費用は仮に相手方負担となるとしても一時的には法人が負担する事になるため、その理由がある事が必要で、それがただ個人の問題であった場合は不適切な支出を意図的に行ったと指摘されかねません。

簡単に言えば、役員個人の車を会社が買ったり、その車の維持費を会社が払っていたりという話しに近く、当然そんな事は許されませんから、これが法人として対応すべき案件であったと説明しなければなりません。

 

「いや、そんな事誰も求めないでしょ?」と言われるかもしれませんが、公開済みの株式会社である以上株主から求められれば否応がなしに対応する義務を負います。なので求める事自体は実は凄く簡単ですから、仮にそういった議論が明確になされていないと思えば、それ自体を改めて訴える事が可能です。

 

つまり、この裁判はそもそも毀損された事実が存在するか、という議論以前に、そもそも法人格としての行動に妥当性があるのか?という話しが主戦場であり、その枝葉の部分で毀損された事実というものが存在しているのか?さらにそれが存在したとしてその場合であっても削除する義務を負うのか?という事についての話しになっているものと思われます。

 

で、この図式が正しい場合、法務担当者は地獄でしかありません。

つまり、法人として対応すればその理由を明らかにしなければならないものの、そもそも現状のやり取りでは法人として名誉毀損にあたるような行為があったとは到底思えません。特段特定サービスや商品について事実に基づかない虚偽の話しを吹聴しているわけでもありませんし、一方で、公開されている事実について言及はしていますが、それは毀損するほどの表現であると断定するのはなかなか難しいでしょう。

結局、この"法人として毀損されたなにか"を立証しない限り、前述のような法人として行った行為の正当性がなくなり、別な法律に抵触する事になりかねません。

 

さらに仮にその妥当性があると証明したとしても、その後も地獄で(法人格として)毀損された事実の証明、毀損された事実に基づく対応を求める行為の実施などを行い、その上でこれは来期の株主総会時に説明しなければならないというおまけ付きです。

 

で、ここからは巻き込み事故になるのですが、当然株主総会で説明するとなれば事前に取締役会を含む意思決定機関による説明内容の決議が必要となります。

具体的にはそうなっている事について会社としてどのような妥当性があってそのような体制、行動を行っているのかと言うことを説明する義務を負うわけで、その説明についての準備が必要となるわけです。

 

当然、業績がよろしければ特定取締役個人に起因する問題について法人として親身に対応する事にそれほどの反発は起きませんが、現実としてはなかなか厳しい決算を抱えています。

おおよそ来期も厳しい決算となることは明らかで、その状況で、いわゆるニコニコ動画の発展によりカドカワという大きなブランドのトップとなった取締役がその個人を中心とした問題に会社を巻き込んでいる事をどの程度取締役会や株主が良しとするのかという問題が発生します。

 

一般的には、よほど会社が守らなければならない状況でない限りは、取締役個人の問題が法人にまで及ぶような事は避けなければならず、それが容認されているとなれば取締役会および監査役の責任まで追求されかねません。

よって、余程の理由をつけなければなぜ解任しないのか、という話しで紛糾しかねないわけです。

 

つまり、法務担当者を中心に事業部門も巻き込んでこれから一年間の戦いの火蓋が切って落とされたと言っても過言ではありません。

 

いや、そこまで考えていないという事もありますが、ただ、事は単純に「僕の名誉が毀損された」ではおそらくすまない領域になっているんだと思います。

 

ちょっとあの程度のやり取りから波及させる内容としては大きすぎるし、普通にこれ解任動議がでてもおかしくない話しになりかねませんから、そこを押さえつける為にもセグメント別の業績においてぐうの音もでないような結果を出すことが求められます。

 

非常に面倒くさい事態だと思います。