何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

棋聖戦、第四局

 

藤井七段 最年少でタイトル獲得 17歳11か月 30年ぶり記録更新 | NHKニュース

素晴らしい将棋だった。前回の反省から9六歩を先に突いたものの、それをものともしない9四桂からの攻めは驚いた。序中盤は渡辺二冠の流れであったものを上手にいなして一気に流れを変えた読みは本当に恐ろしいと思う

 

あっという間であったと思います。

第三局で渡辺二冠(当時三冠/以降、二冠表記)が、藤井新棋聖(当時七段/以降、新棋聖)から一勝を挙げた時、この第四局が勝負である事は多くの将棋ファンが認識しただけでなく、師匠である杉本八段も第五局まで続けば厳しいかもしれないとの意見であった事を覚えています。

 

この第四局は渡辺二冠の先手番であり、第三局からの流れから言っても渡辺二冠が優勢ではないかと私は思っていました。

ただ、始まって解説陣同様に私も驚きました、この日の序盤は第二局で渡辺二冠が負けた将棋の流れを辿っていたからです。

その将棋については私も触れていますが、あの日は9六歩が突かれておらず、結果としてその状態を上手に活用した藤井七段の桂からの攻めが決めてであったと思います。

その為、本日の手順では31手目に渡辺二冠は9六歩を突き、その上で中央から右辺への攻めを進める流れを構想してものと思います。

 

が、藤井新棋聖は最終的にはこの9六歩すら打開する手を打ち込みます。

直接的には9四桂を打つことで、左辺を攻め始めたわけですが、この時点で既に中央から右辺の構図が勝敗を決していたように思います。

具体的には一つは3三での攻防において最終的に銀を引き(50手目)、飛車の攻め筋を限定した事、これで渡辺二冠から見た場合の右辺の攻めはかなり限定されました。

その後51手目に渡辺二冠は2六桂を打ち込みますが、これを藤井新棋聖は受けず、そのまま4五歩と攻めを続けました。結果としてこの歩自体は特に攻めに大きく寄与したわえけではありません。

ただ、この一連の流れで、一つは3三の攻防で藤井新棋聖は2一の桂を捌いており持ち駒とした事、そして4筋の歩を相手にとらせた事で4筋が空いた事によるその後の可能性を広げた事は非常に大きかったと思います。

 

その後、藤井新棋聖が指した9四桂はまさに直前の3三の攻防で捌いた桂であり、ここでの交換の流れが違っていれば、おそらく渡辺二冠からみた場合の左辺の攻防は成立しておらず、結果として引き続き渡辺二冠の優勢が続いていたものと思います。

 

また、ここで一つの文が生まれます。

渡辺二冠が2六桂打ちをしたわけですが、左辺の攻防への対応の為に、ここでの3四金取りを保留します。保留とは、何時でもとれるので今はとらないという手順の事で、これ自体は珍しい事ではありませんが、本局では藤井新棋聖の手駒は非常に少なく、一方で、渡辺二冠の陣は飛車角を始め一切崩れていない状態でしたから一つの駒も無駄にできない状態でした。

実際、投了時点での藤井新棋聖の持ち駒はピッタリ使っており、駒が一つでも足りていなければ逆に負けている状況でした。それぐらいギリギリの流れの中での勝利でした。

 

結果として、ここで保留した金は64手目に2五金、2六金と進み、桂馬を補充します。そして3六金とする事で、渡辺二冠は4五の銀を5五へ逃がします。この動きも結果として渡辺二冠の最後の投了図を見ると大きな影響を与えたものの一つで、ここでもしも金の獲得を保留せずそのままとっていればこの流れはなく、その後の勝負手の一つであった80手目の3八銀打ちはありませんでした。この状況では3六に金がいたからこそ飛車の逃げ場が限定されたわけでもしも金がそこにいなければ、それ以前に相手に金を攻め駒として与えていなければ別の変化となっていただろうと思います。

 

そしてこの3六金、3八銀、この二つの攻め駒によって渡辺二冠の右辺の攻防はほぼ決着しました。相手の飛車を殺し、逃げ道を潰し、その上で駒の効率をほぼ最大にしていましたので、この攻防は致命的だったと思います。

 

この局では、9四桂の打ち込みからの一連の流れがクローズアップされると思いますが、実際にはその時点ではほぼ盤面の流れは決しており、私の感触ではそれ以前の手順、具体的には前述の3三の攻防、3四金を保留した判断、この部分で勝敗の流れが大きく変わったのではないかと思います。

 

当然、その後の流れも頓死の可能性も含め一手のミスも許されない、一つの駒の無駄も許されない状況でしたから、それほど単純なものであったわけではありませんが、序中盤の状況を見ても決して渡辺二冠が大きなミスをしたわけでもなかったと思いますので、そういった小さな駆け引き、選択が結果として後の盤面に大きな影響を与えたわけで、本当に将棋は難しい戦いだと思います。

 

正直終盤までどちらが優勢であるか明らかにはならない勝負となったのは、お互いの棋力がまさに拮抗するレベルであったからだと思います。

 

あと、これほど素晴らしい戦いであったわけですが、一つだけ批判をするのであれば、質問した記者のレベル、これは本当に情けないものが混ざっていたと私は思います。

 

特に 東海テレビの質問者は糞だった。

内容は「これまでもこれまでも29連勝だったり、最年少タイトル獲得だったりと私たちを驚かせてくれました。もうすぐ18歳になられるわけですが、次は何で私たちを驚かせてくれますか?」というもの。

 

馬鹿ですか?

 

これは将棋の世界であり、勝負の世界なんですよ?

29連勝も棋聖獲得も一つ一つの勝利の積み重ねであり、切磋琢磨をしている棋士の努力の賜なわけです。

場外で勝負飯であったり、着物であったりにキャッキャするのはかまわない、だが、これだけ忙しい藤井新棋聖にこんな糞な質問を浴びせ、時間を無駄にするぐらいであればもう来るな!

 

何で驚かせるかなんて「勝負をもって驚かせる」以外にはないし、それ以外で驚かせるような事を目指せばそれはもう棋士ではない。

 

馬鹿な質問をする意図は透けて見えるが、そんな記者としての資質すらない人間を記者会見場に入れるな!

 

恥を知れ!