何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

バレバレの封じ手を選んだ斎藤八段はとても現実的

本日は名人戦第5戦の1日目でした。

最近は序盤が中々面白い展開になる将棋が増えている気がします。

 

今日の名人戦もそんな展開で、封じ手直前には後手の渡辺名人の王将の鼻先まで斎藤八段の手駒が接近し、手駒次第では終盤に入るのではという程の展開でした。

 

一方で、後手の渡辺名人の54手目の8七歩に対する斎藤八段の55手目が封じ手までもつれ込んだというか、斎藤八段が同手番で封じ手を選んだ事についてはAbemaのコメント欄では比較的批判的な意見が多かったように見えました。

実際、この局面は同金以外の選択がない為、基本的に検討の対象はその後の渡辺名人の手がどのような手になるのかという事だけでした。

その内容に約40分程の長考を行った上で、そのまま明らかに8七金というほぼ100%の手を封じ手にする事で、通常封じ手をした側がその後の局面を左右しやすい状況を、どちらかというと渡辺名人の方が封じ手の先を検討できるという状況に見えているようにも思えます。

 

この話については私はむしろ斎藤八段が非常に現実的な選択をしたと考えています。

理由としてはその後の局面が実質選択肢が1つ(あっても2つ)しかないという事です。

 

おそらく封じ手が同金(8七金)であるわけですが、これに対する渡辺名人の取り得る手は、8六桂を成り金として攻めるか、又は3七角とするかの2択かと私は考えます。

ただこの局面では実質3七角の一択しかなく、理由としては、この局面で3七角としなかった場合、その後の斎藤八段の手番のいずれかで6四銀が取られる展開が確定しており、流石に斎藤八段の手駒に角が存在する状況で金駒を渡してしまうと完全に相手が優勢(状況によっては勝勢)になりかねません。

もっとも、既に戦局は先手良しなので多少悪化する程度とも考えられますが、とはいえ、他の手によって3七角を上回るものがありません。

少なくとも3七角とすることで6四銀を守りつつ、相手の4八飛及び5九金に対しても牽制ができる状況です。

 

つまり、実際は55手目を自ら封じる事で56手目の後手の選択がほぼ縛られており、その為に実際には自分は57手目の3七角以降の展開を読めばよいという事になります。

 

確かに時間差が多少ついてしまった事は否めませんが、局面としては今後は比較的わかりやすい展開が読めている(手駒的にも優勢となり、且つ、盤上の配置も優勢)ので、この状況であれば残り時間約4時間半で、持ち時間の差が1時間程というのは全くもって上々であると言えます。

 

ちなみに、仮に斎藤八段が同金(8七金)を指していたとしても、おそらく渡辺名人は最終的には3七角を指していたのではないかと思います。

という程、ほぼこの流れは一直線の流れで、仮にそれ以外の選択肢、少なくとも8六桂を成り金にするような展開はありえない(おそらくその後は後手が攻め手がなくなり、実質負けが確定する流れに入る)ので、そういった意味でもどの状況で封じ手をするかというのはあの局面ではそれ程影響しなかったと思います。

 

逆を言えば、渡辺名人は3七角以外の流れ又は3七角以降の流れで起死回生の手を見つけられるかどうかが2日目の午前の山場かなとも思いますし、もしかすると午後の比較的早い段階で決着がつくかもしれないという事も予想されます。

 

当然、何が起こるかわからないですから、いずれかが投了するまでは何でもありえるわけですが。

 

何れにせよ、個人的にあの封じ手を選択した斎藤八段はとても現実的でこの七番勝負の中で本局がもっとも斎藤八段らしい将棋ができているのではないかと感じました。