何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

割引を得られるという事は、その分元々賃料に転嫁されている

 

「賃貸の更新料謎すぎる 更新するんだから逆にお金くれよ」→借りる側、貸す側の反応さまざま - Togetter

長くすむと賃料さがるロジックは自身の信用力が賃料に影響を与えるという仕組みを肯定する事になるので、逆に初回契約時や異なる不動産会社の利用時には高くなり、さらに人によってはずっと高くなるがそれでもよいの

 まぁ、確かに更新料(手数料ではない部分)は実際何の為なのかというは疑問で、基本的にご祝儀扱いなので、古いしきたりで廃止/規制すべきとは私も思う。

 

一方で、興味深いのは「長くすんだのだから賃料はむしろ割り引かれるべき」というロジック。

一見すると「なるほど」と思いそうにもなるが、いやいや、それ相当いろいろマズいと思うが。

 

単純に長く住んだのだから賃料が安くなるという事は、一つは建物の経年劣化による価値の減少分の反映という見方や、一つは貸主のとの関係において一定期間の信頼される関係を築いた事により貸主側のリスクの低下によるコストの低下などが考えられる。

 

まず前者についてはそもそも今でも行われていて、例えば物価連動で賃料が上がるケースもあれば、退去を申し出ると賃料の割引の提案を受けるなどもあったりする。それらは単純に人気や価値といったものが賃料に反映されているもので、それにあたる。

もっとも、都市部では賃料は今の所右肩上がりなので安くなるケースは稀だが。

 

一方で後者の話がメインで、結構これは多くの人に影響があり、それ程喜ばれない仕組みだと私は思う。

 

皆、長く住んでいるから安くなるはずだと考えているが、安くなるという事は、安くする余地が元々あったという事になる。

現在の賃料は単純にその物件の価値で定まっており、原則、借主により賃料が上下する事はない。10万円/月の募集は誰が借りても同じ賃料で、唯一違うのは審査により契約が拒絶される事があるというもの。

この仕組みは、貸主としては賃料に一定のリスクを織り込むものの、一定の閾値を設け、その閾値を基準に貸主がリスクを管理するという方式。想定を外した場合は一律貸主が損をする仕組みで、借主側は契約さえできれば特段損も得もない。

 

では、コメントにあるような仕組み、つまり信用力に応じて賃料が決まるという仕組みだとどうなるのだろうか。

この場合、単純に借主の信用力により上下するわけだから、収入が多い、勤務年数が長い、勤務先の社会的信用が高い、借入が少ない、預貯金が多い等の幾つかの条件により賃料が決まる事になる。

そして、貸主はリスク相当分を全て賃料に転嫁する事になるので、少なくとも同じ物件を借りると想定しても、初回契約時は確実に現在の賃料よりも高くなり、次回以降、更新の都度そのリスク相当分の一部について減額されることとなるので、おそらく大半の人は今よりも損をする事が想定される。

 

その上、この仕組みだと、裕福な人や安定性の高い人程得をし、一方で、生活に余裕のない人であったり、例えば子育て世帯、シングルマザー/ファザーのような世帯程賃料が高くなる事が想定され、社会的にもなかなか厳しい仕組みとなるのではないかと思われる。

 

私自身は極論審査手数料すら払いたくない場合(保証会社必須のケースとか)は、契約期間中の賃料の一括前払等も選択肢に入れる人間なので、信用力に応じて賃料が変動するというのはウェルカムではあるが、おそらくそんな人は多くないだろうし、そもそも大半の人は初回時の賃料がさらに上がるという事に否定的になるのではないだろうか。

特に私のように比較的引っ越しをする回数が多い人間からすると、都度信用力の影響で初回契約時にそのリスク相当分を賃料に上乗せされるというのは、なんとも言えない気分になる。

(まぁ、その時は一括前払でリスク相当分の減額を提案すると思うが)

 

何かしらの価格から、一定の額が割り引かれるというのは、基本的にはその割引相当額が価格に含まれているわけで、何もないところから、突然割り引かれる事はない。

余程売れ残りで、誰も借りてくれないような物件であれば、原価割れしても貸し出す事が想定されるが、普通家賃というものは、償却期間等から計算してどの程度の価格で貸し出すべきか試算されており、そこに物価や周辺物件の相場等を考慮して調整されるわけで、大抵の場合は割引が見込まれるような物件はおそらく限りなく少なく、それらは今でも不人気物件という事で割り引かれているのだと思う。

 

つまり割引を得られると言うことは、元々その割引を想定されるコストが価格に含まれており、その分高いコストを負担していたわけですから、ロジック上貸主は相対的に損をしない仕組みとなり、一方で借主は絶対的に得をする人と、損をする人が明確に別れる事になる。

 

「それいいじゃん!」と思われがちだろうが、おそらく本当に信用力を元にしたロジックで賃料を設定された時、多くの人は「ふざけるな!」と言うのだろうなと思った。