何気ない記録

なんとなく自分の意見を書き記すときにつかいます。つまり不定期更新です。

それは年金制度の問題ではなく、実質賃金の伸びの問題

 

金融庁が年金給付水準の維持は困難と明言 国民に「自助」呼びかけ - ライブドアニュース

一応マジレスしておくと、仮に年金制度を完全廃止しても大凡貯金する人は全体の半数にも遠く及ばないので、結局公的補助の負担は現状と変わりなく労働世代にのし掛かる上、計画的な備えがないので加速度的に破綻する

 

最近忙しくてコメントへの返信も滞っています。

週末にでも時間ができたらまとめて行う予定です。

 

ちょっと気になったのが、この記事、基本あまり意味はないのですが、ただ、解釈を勘違いしている人もいそうなので、ちょっとだけ。

 

そもそも年金制度が負担を次の世代に肩代わりさせているだけの代物と成り果てたのは、設計した時からの問題であって今更議論する必要はありません。

ただ、当時は基本は実質給与も労働人口も少なくとも横ばい、または一定の増加をすることを想定した設計であったため、単純に段階的に支援の規模は膨らむ為、現状危惧されているような状況には陥らないという想定(希望的観測?)でした。

 

一方で、実際には少子化は当然の事として、人口構成の歪みや、都市部と地方の不均衡、世界的経済の影響、そして実質賃金の伸びの問題と、根本的にねじれる原因がありすぎて如何ともし難い状況であるわけです。

 

人口問題も致命的ではあるのですが、それ以上に厳しいのが物価と賃金の不均衡な状態です。

特に、日本は言うまでも無く見かけ上は輸出により外貨を稼いでいますが、その源泉は輸入により支えられています。

 

輸出入は当然外貨を基準として行われますので、外貨と自国通貨の関係が正常なものでなければなりません。

ここでいう「正常」とは、単純な為替レートの話しではなく、物価と所得を総合的に勘案した通貨間のバランスという話しです。

 

海外でも物価は一定の割合で右肩上がりなわけですが、一方で給与支給額も一定の伸びを示しています。

当然と言えば当然なのですが、物価が上がる以上は企業の売上にも一定の寄与がなされるわけで、それが労働者へ還元されて初めて市況をした支えできるわけですから。

 

所が日本ではこのバランスが全て崩壊しています。

実質賃金は基本的にマイナス成長であるため、物価が上がっても結果的な購買意欲は上がりません。

さらに、前述のとおり国内景気は自律的なものではなく、輸出入を中心とする諸外国との関係に大きな影響を及ぼされるものの、外貨と自国通貨の関係も正常な状態ではありません。

留めに米中貿易摩擦は激化しており、ここも諸外国との取引においての一定の影響を及ぼす事から、そういった事も今後の国内景気や労働者への賃金への影響を及ぼすでしょう。

 

結局のところ、自国で管理できるもっとも単純な指標としては、実は実質賃金でしかなく、それ以外のものは自国だけでは到底コントロールできないわけです。

しかし日本はその点すらコントロールできておらず、日本以外の国でもそうですが、この部分をコントロールできない国は基本的に詰みます。

いや、資源国だけは除かれますが、中東を見てわかるように、彼らですらその限界がある事を理解しており、経済の柱を作る事に躍起なわけで・・・。

 

では年金制度は即刻廃しすべきかと言えば、私はそうは思いません。

 

金融事業に携わるとはっきりわかる事は、基本的に現代の労働者は貯金・貯蓄は行えていないという事です。

純粋に資産がプラスである人は、おそらく政府の統計よりも少ないでしょう。

これは、例えば50万の貯金がある一方で、カード利用額の残高が50万円ある人は、これは(暴論ですが)実質的には貯金は存在しない事と同義です。

確かに将来的な負債を現時点で償還すべき想定というのはおかしな話しですが、ではその状態が5年後に貯金250万円のカード利用残高が0円となっているかといえば、多くの場合でそうではありません。

貯金額は増加する事はありえますが、ライフスタイルが変わらない限り、カード払い、リボルビング払いを使う人は使い続けますし、分割払やボーナス払いを使う人も同様にライフスタイルの変化が訪れない限りは基本的にその構造に変化はありません。

 

ここで考えるべきは、例えば年金制度を廃止し、仮に掛け金の支払い額相当額が労働者にそのまま支給されている状況になったとして、労働者はその掛け金を元に年金制度以上の運用実績を上げることができるのか?という事です。

 

基本的に投資は少額投資での勝率よりも、一定額単位での管理の方が圧倒的に高くなります。

理由は単純でポートフォリオが組みやすくなるためであり、一定の仕組みの分散投資を多重に組み合わせることで、安全性を高めることができます。

 

多くの労働者は個人で資産形成を進めるという事は難しく、所謂年金制度で得られるような期待利回りを得ることはできないでしょう。

 

さらに問題なのは、強制徴収される年金とは異なる為、自律的にそういった行動、つまり給与支給額から自ら判断して固い意思を持ち金融資産を積み上げるという努力ができないと、将来的には完全に詰む事になります。

 

おそらくその時点で利用されるものは低所得者向けの支援制度となるわけですが、これは年金とは違い政府も即時対応可能な資金により運営しますから、年金とは異なり運用利回りにより将来分をまかなうような事はできません。

 

その為、結果として現役世代から徴収する金額を別な名目で拵えるか、または低所得者支援自体を廃止するかの二択になります。

(流石に年齢上限の存在する低所得者支援制度は国際常識的にも不可能でしょう)

 

こういった事情もあり、無茶である事はわかっても、如何にソフトランディングさせるかというのが腕の見せ所でありつつ、もう一つは何れ破綻する可能性のある年金制度、厳密には高齢者の所得獲得という問題について段階的に手を打つ必要があります。

 

その為、兎に角高齢者には働いて欲しいし、現役世代には資産を積み上げて欲しいし、というアピールを政府としては必死に行うしかないのが現状です。

 

これは政権交代しても如何ともし難いことです。

 

ただ、改善できる部分は明確であり、実質賃金部分はコントローラブルなわけですから、ここを管理できるか、できないのか、というのは与党や政府の通信簿となるといってもいいでしょう。

 

もっとも、統計問題があれなので、通信簿を正しくつける事自体があれなので、それ以前の状態である事はいうまでもありませんが。

 

なので、まぁ、年金制度を廃止する意見を検討するときはそういった連帯する問題についても結論をだす必要があるという事と、根本的には年金制度の問題というよりも、足下では実質賃金(給与)の伸びを適正にする事が第一歩で、どのみちそこが適正化できないなら、年金制度を廃止しようがしまいまいが、詰んでいる事に変わりはありません。