可能性はゼロではないが、限りなくありえない話しかと
高2の子が「某空港からアプリ開発の案件を500万で受けた」と言ってたけどその方法が「やばい」「優秀すぎる」と話題に - Togetter
一応言及しておくとそもそも空港に限らずこの手のシステムが縄張りがしっかりしておりメーカー案件になるのだが。一般的に通年での保守契約があるので仮に素晴らしいプレゼンであっても保守を切って外部に発注はない
まず、一般的な商慣習について知識があればわかる話なのですが、アプリについてもサービスについても、通常企業間では通年での保守契約を結ぶ事が一般的です。
且つ、それなりの規模の開発であったり、一定規模同士の会社の契約となる場合は、開発案件と保守契約が切り離されることはまずありえず、その上で保守契約は一般的には最低でも1年程度は開発契約に付帯しており、通常は3年〜5年程度の延長(3年というのは、一般的なサーバー設備の最大保守契約可能年数で、つまりは機器保守の契約切れと同時にリプレイスまたは設備と合わせての再度の入札となる)が想定されるものです。
その為、よほど小さな仕事出ない限りは、大抵の場合直接元請けからの発注という事はなく、1次受けの開発案件の受託者からの再委託以外はありえません。
その為、仮にウェブサイトやアプリに何かしらの不備があったとしても、保守契約がある関係から別途予算をつけて再開発するという事はほぼありません。
仕様内の不備であれば瑕疵として保守費用内で受託者が負担対応するので、元請けの負担とはならず、一方で、仕様の範囲外の話し出れば受託者は追加費用を見積もり、保守費用内での対応が難しい場合は追加費用の請求を行った上での対応となります。
ですので、受託者以外に発注するとなると、開発済み資産の破棄、契約済み保守契約の破棄、場合によっては一方的理由による契約の破棄により損害賠償というリスクも負っての発注となりますので、仮に再開発分の費用が500万だとしても、おそらくは実質損害額は数千万に上るものと思われます。
また、一般的にこの手の案件は個人事業主には発注が行われません。
というのも、個人である場合、その開発したアプリやサービスの保守や運営、さらに言えば事故発生時の責任を個人に対して負って頂く事になるのですが、その場合の責任が現実的には負えないという事になるためです。
ですので、大抵の場合、一定規模の案件になると競争入札を行う事が通例で、まず任意対象との選考なしでの契約というのは、契約実務における不正排除の観点からも行われません。
おそらくありえるとすれば、発注先企業の下請け業者者または孫請け業者の一担当者として参加する程度の事はあるでしょう。
まぁ、絶対にないという事は当然ありませんし、可能性としてゼロではないのですが、実際問題、特に日本ではその手の営業は大抵取り合ってもらえないのが一般的で、仮に素晴らしいプレゼンであっても、入札要件を満たさない限りは一定規模以上の仕事は受託できないというジレンマがあります。
そうった事情もあり、いわゆる「仕様書書き」という仕事があるのですが、メーカーはこの入札仕様の策定に如何に関わるかという事を躍起になるわけです。
その他、これも一般的な知識ですが、大手では実務を行う部署と購買部門が必ずしも
同じではありません。
つまり、実際に発注するのは実務を行っている部署ではないので、仮に相手が学生であるとなれば、その取引の安全性について実務部署は購買部署に十分な説明を行い、社内的な承認をとる必要があります。
そういった点からも、仮に発注を受けたとしても私たちが考えるようなアプリのまるごとの開発という話しではなく、恐らくは支援業務であったり、その内の一部程度ではないかと推測します。
まぁ、空港といっても日本には大小ありますから、どこから発注を受けたかという事もありますから、嘘松のような話しとして切り捨てる事もありませんが、同じ事をすれば誰でもなんとかなる話しでもありませんので注意が必要でしょう。
もっとも、500万という金額はそれなりの空港に関わるアプリとしてはあまりにも少額過ぎますし、一方で小規模の独立系空港だとすると微妙(そこまでコストを負担しない/というか作らない事の方が多い)なので、なんとも言えないというのはありますが。
まぁ、そんな事を感じました。